全塾ゼミナール委員会は9月29日から南校舎ホールで業界講演会を開催している。将来の展望を定め、学問研究の充実をはかることを目的とする本講演会は、今年で26回目を迎える。各業界の大手企業の方々を招いたこの講演会は、11月29日まで対面・オンラインハイブリッド方式で開催された。
損保業界(東京海上日動火災保険株式会社)
10月14日、東京海上日動火災保険株式会社から慶大の卒業生社員が登壇し、損害保険業界の仕事ややりがいを説明した。
損害保険業界の業務は大きく法人向けと個人向けの2つに分けられる。
前者には、法人が挑戦できる環境を創るリスクコンサルティング業務や既存事業を支援したり新規事業を共創したりする事業戦略パートナーとしての業務が存在する。また、後者には代理店を介したマーケティング業務などがある。
どのような顧客に対する業務であっても、その顧客のパートナーとして相手に寄り添って考える力が重要となる。
また、営業部門や海外駐在など数年単位でジョブローテーションが行われる。自らが希望するキャリアにチャレンジする機会もあり、誰一人として同じキャリアパスの人間は存在しない。
質疑応答の時間には「面接官は就活生のどのような要素を見ているのか。人物像はその要素に合わせて取り繕うべきなのか」と、全就活生の代弁者が会場を沸かせた。
社員の宮本氏は「取り繕って自分と合わない会社の合格を手に入れてもお互いにメリットが少ない。面接官もありのままを引き出すために学生と向き合っている」と冷静に答えた。
また最後に、就職活動や社会人生活の助言として「社会は甘くはないので初めから楽しい仕事はなかなかない。けれど、どんな仕事でも楽しむことができる人間は強い」とも語り、塾生に対するエールを送った。
外資金融業界(ゴールドマン・サックス証券株式会社)
10月4日、金融業界として、ゴールドマンサックスから慶應義塾大学の卒業生、5名が登壇。金融業界、仕事内容について講演した。
外資系金融企業の仕事は多岐にわたる。具体的には、証券の売買を取り扱うセールス&トレーディング業務を中心に、投資業務、資産運用、不動産業務などを含む幅広い金融サービスを提供している。投資業務は、その成否によって、依頼者の資産に対して大きな影響を与える。そのため、確実に利益を生み出すことができるという信頼が必要だ。その信頼を得るため、依頼者に対してプロセスを明確に示すなど長い時間をかけて寄り添うことが大切だ。
ゴールドマンサックスは、人材が最大の資産であると考えている。情報があふれ、目まぐるしく状況が変わる金融業界では、常に情報を追い続ける必要がある。また、その状況に適応し、相手と円滑にコミュニケーションをとるというアウトプットも大切だ。商学部の卒業生、本間公人氏は、「人数が少ないため、広範囲をカバーできる能力が必要」と話す。企業としても、社員が能力を最大限に生かすことができるように取り組んでいる。例えば、人材育成のために、入社時の研修に加え、専門に合わせた研修を行っている。また産休育休も取得しやすい。
最後に講演の締めくくりとして、本間氏は「人生の中で就職することは、スタート地点に立ったに過ぎない。気負わず自分のやりたいことにチャレンジしてほしい」と学生にエールを送った。
証券業界(野村證券株式会社)
10月25日、証券業界の代表として慶應のOBを含む、野村證券の社員3人が登壇した。
人材開発部の中村さんは証券会社の役割を「豊かな社会の創造」だと述べた。アイディアを具現化し、新たな技術やサービスを開発し、提供することを目指している。
証券会社の業務内容は、有望な企業に資金を供給することを通じ、投資家と成長する企業を繋ぐことであると中村さんはいう。資産運用をはじめ、不動産売買や株式上場(IPO)などを提案する営業部門がある。また、金融派生商品を扱うなどして、機関投資家に資産運用のソリューションを提供する役割を果たすグローバル・マケッツ部門や、資金調達や企業の合併・買収(Ⅿ&A)などの業務を担当するインベストメント・バンキング(IB)部門もある。
とりわけM&Aは金利と為替が大きく変動している今の時期だからこそ、外貨の金利と元本を交換する通貨スワップを活かしているとIB部門担当者の吉澤さんは言う。また、ESGファイナンスなどを通じ、金融業界の流行や最近話題になっている持続可能な社会の実現にも取り組んでいる。
野村證券への入社を決めたきっかけとしては、変動する市場を対象とする業務内容が新鮮であることや社員の人柄などが挙げられた。また、関わる案件の金額や社会に与える影響の大きさ、IPOなど長期間にわたる業務において議論を重ね、仕事の深いやり取りができることにやりがいを感じていると吉澤さんは述べた。今後、証券会社への就職を目指している塾生には簿記の勉強と英語能力の向上に打ち込むことを勧めた。
最後に、情報格差が顕著である地方に、全国を隅々までカバーできる日系企業ならではの長所があると中村さんは話した。「野村に任せてよかった」といった信頼関係の構築を大切にしているという。
(林真帆・鈴木廉・パクテヨン)