「“もっと”この熱狂を外へ」。スポーツ大会のスローガンを彷彿とさせる。誰がここから麻雀を想起できるだろうか?

タバコの煙が渦巻き、年配男性が集う。これまでの麻雀へのイメージを刷新したのが、2018年に開幕したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」だ。「いま、最高の個人競技が、最高の団体競技になる。」をテーマに、全8チーム合計32名の麻雀プロがしのぎを削る。

Mリーガーはドラフト会議で各チームから指名を受ける。記念すべき1人目として指名されたのは、園田賢プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会所属)だ。任された開幕戦をトップで飾り、所属する赤坂ドリブンズは初年度優勝を勝ち取る。史上初の優勝シャーレを掲げた人物だ。

園田氏は2005年に慶大環境情報学部を卒業してから、いかなる道を歩んで麻雀プロへと辿り着いたのか。

浪人中の出会いが一生ものへ

園田氏と麻雀の出会いは、浪人中に始めた雀荘バイトだった。「都会の大学生活を送りたい」との思いで慶大を受験し、翌年地元兵庫からの上京を決意。SFCのキャンパスが藤沢であることに落胆することもあった。入学後も麻雀は続けたが、プロになるつもりはなかったという。

サークルで出会った友人たちと麻雀に向き合う日々。「授業をもっと受けていれば…」「時間を有効活用できていれば…」という後悔もあるが、現在も定期的に会う友人ができるなど、充実した大学生活を送った。

きっかけは就活だった。大学で真剣に何かに取り組んだ肩書きを得るために、麻雀のプロ試験を受験し、合格。その後は、遊びではない「勝ちにこだわる麻雀」の魅力に取りつかれる。

結局数年間は就職せずに、麻雀プロ・雀荘スタッフとしての暮らしを続けた。その後、結婚や将来への漠然とした不安から、IT系企業に就職。会社員と麻雀プロの「二足のわらじ」で生活することとなる。現在は自身で会社を立ち上げ、麻雀に関わる仕事の傍ら、システム開発などを行う。

「勝ちを追求する麻雀が“魅せる”ことにつながってほしい」

Mリーガーとしての歩みが始まったのは2018年のこと。園田氏は初年度からチーム赤坂ドリブンズに1位指名を受けた。当初は正直、どこまで盛り上がるのか半信半疑だったという。しかし1年プレイを続けるうちに、それまでのリーグ戦とは一線を画す人気の高まりを感じた。新聞に1面広告が載ったり、親子連れがMリーグの試合を観戦にも来たり来るように。

Mリーグの影響はプロとしての活動にも及んだ。観客層が広がるにつれ、ライトな観客も楽しめるエンタメ的要素も必要になってきた。グッズ販売や、ファンとの交流に力を入れる人もいる。プロ活動の幅が広がるなか、園田氏はそれでも純粋に麻雀の勝ちを追い求めるスタイルを崩さない。

「自分が信じる麻雀があって、毎局毎局、ほんの僅かに良い選択をし続けていく繰り返し。勝ちを追求する麻雀を打つことが、結果として“魅せる”ことにつながってほしい」

麻雀プロは対局の内容が一番であるべきだという意識を貫いている。

「本当に好きなことで生きていくのは難しい」

Mリーグで麻雀プロに日が当たるようになった一方、麻雀プロとして生きる難しさももちろんある。麻雀は確率ゲームだ。仮に最も有利な選択をすることができても、それがすぐ結果につながるとは限らない。麻雀を打つのが苦しいこともある。しかし麻雀プロとして結果を残さなくてはいけない。

「やりたいこと」を追求した人生を送る園田氏。だからこそ「好きを仕事に」への現実的な視点がある。麻雀プロの中でも、Mリーガーとして脚光を浴びるのは約2000人のうちたった32人。

「麻雀プロも含め、本当に好きなことで生きていくのは難しい。もう打つのが苦しい麻雀も多い」

語る言葉には重みがある。好きを仕事にしたってすべてが楽しいとは限らない。それでも麻雀を続けるのは、その尽きない魅力のおかげだろう。

「今はいろんな人に『園田の麻雀』を知ってもらうのがすごいやりがい。麻雀は世界最高のゲームだと思う。運と実力のバランスが秀逸だし、非常に複雑で終わりが見えない」

大学生のうちに時間かけてやりたいことを!

最後に塾生に向けてメッセージをもらった。

「社会人になると、時間を使って何かやりたいと思っても、それにかける時間がなくなってくる。大学生のうちにそれをしっかり取り組んだ方がいい。遊ぶのも必要だけど、自分の糧になる時間を有効利用するのがいいと思います。それから、大学時代の友人は、その後のずっと関係が続く。なるべくたくさんの人と付き合って、大学終わった後も引き続き、仲良くできるような関係を作るのが素敵なんじゃないかな」

充実した生活を送りつつ、麻雀に熱中する大学時代はきっと刺激的な日々に違いない。でも最後に一言「ハマりすぎには要注意」

 

【著書「麻雀のネクストレベルの扉を開く 魔術の麻雀」を持つ園田氏】

 

【白鳥翔プロの記事はこちら】
https://www.jukushin.com/archives/48989

乙幡丈翔・山下和奏