これまで、ミスコンでは実名と顔を公表することが当たり前とされてきた。今年慶大で開催される、「ミス慶應コンテスト」「ミスSFCコンテスト」「ミス慶應キャンパスコンテスト」もその例外ではない(ミス慶應理工コンテストは中止)。
「匿名で」「お面で顔を隠した」ミスコン
昨年、立命館大では、お面で顔を隠し匿名で活動するミスコン、「ミラクルガール立命館」が開催された。応募フォームを通じて参加者を募集。止むを得ない場合をのぞき、運営メンバーも参加者の素性は知らない状態で、合計7人のファイナリストを選んだ。
個人SNSで魅力をアピールすると同時に、運営メンバーも企画した。料理名から想像して作った料理の味を競う「創作料理対決」や、恋愛に対する考え方や価値観を探る「ラブレター選手権」を開催した。そのたびに、予期しない個性や「本人も気付かなかった」魅力の連続だった。
一人ひとりに合った賞を用意
自己表現のうまさやSNSでの発信力などを基準に、オーディエンスはファイナリストに投票する。その結果、姫子さんが初代ミラクルガールに選ばれた(「みんなのBF賞」も受賞)。
くわえて運営メンバーは、各ファイナリストの魅力を表現する賞も用意していた。ピチピチ泳ぐヨうなぎパイさんは「粉骨砕身賞」、朝まで生ビールさんは「アーティスト賞」、Faさんは「スーパー愛され賞」、3時寝推進委員会さんは「うちらの仏賞」、嶋野の仔犬さんは「みんなのエンターテイナー賞」、全肯定ちゃんは「輝く太陽賞」をそれぞれ受賞した。
同一の基準で評価するのではなく、それぞれの個性に焦点を当てた形式であることがわかる。非常にユニークなミラクルガール立命館。前年度代表吉川仁菜さんと今年度代表紺屋太志さんに、開催の経緯や今後の展望について話を聞いた。
「お面で隠したら面白いじゃん」→外見に偏重しない運営へ
根底にあったのは「コンテスト自体は悪いものじゃない」という思いだ。参加を通じて生まれる自信や、達成される目標もある。ミスコンを廃止する大学もある中で、容姿とは異なる軸のコンテストを開催したい、という思いが募ったという吉川さん。
匿名にすることで、引っ込み思案な性格や身元を知られたくない学生に参加してほしいという狙いもあった。その後は、「お面で隠したら面白いじゃん」というアイデアを契機に、外見に偏重しない運営を模索した。
とくに意識したのは、優劣をつけずに、参加者がお互いを尊重し合い個性を披露できる環境づくりだ。運営メンバー1人が1人の参加者を担当し、二人三脚で自身の魅力を紹介するプレゼンなどを作成した。
詩や小説を作成する参加者がいるなど、各参加者が考えた個性が光り、「自信がついた」と口にする参加者も少なくなかったという。
今年度はコンテストからウェブメディアへ
9月には公式インスタグラムを通じて、今年度はコンテストではなくウェブメディアとして情報を発信すると発表した。
その経緯は、「自分の個性に既に自信がある子しか出られない」からだという。相対的に評価されるコンテストに出場するのは、匿名だとしても勇気がいる。開催趣旨である、自分の気付かない個性や、身近にいるちょっとすごい人が輝ける場所を提供するために、今年度はメディア運営に舵を切ったのだと紺屋さんは語った。
ただ、あくまでも今年度の話であって、来年度以降については参加者と話しながら柔軟に開催形式は変更する予定だという。
公式ウェブサイトでは、太字で「現在の『ミスコン』に対応するもう一つの選択肢」とコンセプトが説明されている。
根幹にある「面白そう」「匿名」という2点は維持しつつ、参加者の需要に応えながら、今後も「ミラクルガール立命館」は学生がさまざまな個性を自己発信する場を提供する。
(山下和奏)