「人づくりなくして国づくりなし」をモットーに掲げる、現衆議院議員7期目の笠浩史(りゅう・ひろふみ)さん。テレビ朝日政治部記者を経て政治家となり、文部科学大臣政務官、文部科学副大臣等、国政の要職を歴任した。立憲民主党所属の衆議院議員として活躍する笠さんに、慶大での学生生活から政治家となるまでの道のりについて話を聞いた。

議員宿舎に住み込んだ慶大生時代

笠さんは福岡県出身。福岡県立修猷館高校を卒業後、1984年に慶大文学部人間関係学科(現・人文社会学科)社会学専攻に入学した。日本の中心である東京に出たいという思いから、上京し慶大に進む進路を選んだ。高校時代は新聞部に所属し、文章を書くことや読書に親しみがあったことも、文学部進学の理由の一つだったという。

経済的事情により上京後の仕送りはなく、奨学金を学費にあて、アルバイトで生計を立てる学生生活が始まった。家庭教師など様々なアルバイトを経験する中、大学1年の冬に転機が訪れる。慶大経済学部卒業生で、同郷の福岡県出身でもある太田誠一衆議院議員(当時)の事務所でアルバイトを始めることになったのだ。

その後、太田議員の計らいで赤坂の衆議院議員宿舎に住み込み、議員の身の回りの手伝いや車の運転を担うことが決まる。朝、議員を起こして宿舎から議員を送ったあと、笠さんは大学に向かう。講義が終わると議員会館に戻って事務所の仕事を手伝い、夜の会議が終わるまで議員を乗せて運転する毎日を送った。

多忙な学生生活を振り返って

議員宿舎に住み込んで大学に通った日々を、笠さんは「政治に関わるスタート地点だった」と述懐する。一方で、「何らかの形で政治に関わっていきたいという願望はあったものの、自分自身が政治家になるということは思ってもいなかった」と話した。

大学在学中にやってよかったと感じる経験について笠さんは、「できるだけいろいろな人と知り合い、多くの友達を作ること。慶應義塾には多様な個性を持つ学生が多く在籍しており、人間関係を通して自分自身を鍛えていくことができた」と語った。まとまった時間が確保できる学生時代には、旅行や読書、自分の関心のあることに打ち込むなど、大学生ならではの贅沢な時間の使い方をするべきとも話した。

テレビ記者、そして政治家へ

大学入学当初よりマスコミへの就職を視野に入れていた笠さんは、東京で記者をしたいという思いからテレビ朝日に入社。6年目には政治部に配属され、永田町で政治家を取材する政治記者としてのキャリアが始まった。テレビ記者時代に培った、物事の要点をつかんでわかりやすくまとめる能力は、政治家となった今でも活きているという。
政治家となったきっかけは、記者時代に知り合った政治家の推薦だった。2003年の衆議院議員総選挙に出馬し、見事神奈川9区(川崎市多摩区と麻生区全域・宮前区の一部地域)から初当選。現在も続く政治家人生へのスタートを切った。

「人づくりなくして国づくりなし」

政治家として19年目に入った今、印象に残っている出来事は、「高校教育無償化政の実現に、主導的に携わったこと」と話す。
中学2年で父親が他界し、奨学金を得て慶大を卒業した笠さんは、「意欲があれば、誰でも学べる社会を創りたい」という強い信念を持つ。自身の経験からも、少人数学級の実現や生涯教育の充実といった教育政策にも力を入れている。「人づくりなくして国づくりなし」という政治信念には、誰もが教育が受けられる環境の実現を目指すという思いがこもっている。

駅頭から国会に声を届ける

笠さんが政治家人生で重視していることは「駅頭演説」だ。初当選した2003年から、自身の選挙区である神奈川9区内の各駅で、ほぼ毎朝演説を続けている。雨が降る日や、冬の寒い日でも、朝6時半頃から2時間程度、マイクを持って駅頭に立つ。記者時代に国会議員と有権者の間に距離があると感じ、その距離を縮めていきたいという思いが根底にあった。駅頭演説を続けているうちに地域住民に声をかけてもらったり、挨拶をしてくれる子どもたちの笑顔に励まされたりすることもあるという。

慶應義塾で学ぶ塾生へ

笠さんは慶應義塾の強みについて、「同窓意識が強く、卒業後も三田会を中心に企業や地域単位でネットワークが形成されていること」だと考える。自身も政治家人生で、「囲む会」を開いてもらうなど、同窓の縁を通して熱心な指導・応援を受けた経験があると話す。

最後に笠さんは現役の塾生に対して、「型にとらわれずにいろいろな経験を積み、自分が追いかけたい道を見つけてほしい。学生時代は良い意味で一種のモラトリアムでもある。かけがえのない時間を、趣味に打ち込み、自分の興味を追求して過ごしてほしい」と話した。

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衆議院議員・笠浩史(りゅう・ひろふみ)さん

福岡県出身。慶大文学部人間関係学科(現・人文社会学科)社会学専攻卒業。元テレビ朝日政治部記者。2003年の衆議院総選挙で初当選し、現在七期目を務める。過去には文部科学大臣政務官・文部科学副大臣・衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長等、数々の要職に就いた。

 

(山口立理)