慶應義塾生協食堂(以下、慶應生協食堂)は9月1日、慶大全キャンパスにおける生協食堂メニューの価格を値上げした。背景には、新型コロナウイルス蔓延がある。多くの大学生協が1年以上前からメニュー値上げに踏み切る中、慶應生協食堂は値上げをせず「耐えてきた」。利用者の経済状況に配慮した努力であったが、物流費や食材費の高騰が追い打ちをかけ、今回やむを得ず価格改定した。

 

全単品商品一斉に

 

9月1日から、どんぶり類30円、カレー類20円、麺類30円の一律値上げが決定している。本紙は、これまでの価格維持と今回の値上げ、その背景を、慶應義塾生活協同組合食堂担当の芳賀氏に取材した。

 

「耐え」の1年も運営は厳しく

 

多くの他大学の生協食堂では、2021年3月からメニューの値上げが行われていた一方、慶應生協食堂は約1年間、値上げをせず耐えてきた。他大学の生協食堂で行われていた値上げは、新型コロナウイルスの蔓延による食堂利用の不安定化が原因だ。トレーサビリティ(食材の追跡可能性)のレベルを落とさず、安全で良質な食事を提供し続けるためには、価格改定が避けられなかった。一方慶應生協食堂では、対面授業が行われず学生が大学へ来ることができていない状態で値上げはできないと判断したこと、現状の利用者の経済的負担への考慮から、値上げをせずに「耐えられるところまでは頑張ろう」と努力してきたという。しかし、更なる物流費の高騰や食材の値上げで食堂運営が厳しくなり、今回やむを得ず値上げという選択に至った。

 

 

およそ1年もの間、厳しい状況にもかかわらずメニュー価格を維持してきた慶應生協食堂。耐えの1年間価格を据え置くため、スタッフの契約時間の見直しや独自メニューの提供を行った。経費削減のため備品購入も抑制、大学管理当局に水道光熱費を1年間免額してもらうなど、内部努力を重ねていた。

 

値上げをしなかった分、他大学生協食堂との利益高や、売値のうち利益が占める割合(剰余率)の格差は広がっていった。人気メニュー「慶應パワー丼」の値上げもできず、しかしその人気ゆえに提供中止もできないという板挟みにも苦しんだ。

 

これまで提供していたメニューは、今回の価格改定で全て値上げとなる。「慶應パワー丼」は、味付けなど内容を一新して価格を設定する予定だ。

 

これまでの動向

 

慶應生協は、2020年3月にも生協食堂メニューの値上げを行った。同時に組合員割引制度が開始され、生協組合に加入していればそれまでと変わらない価格で利用できる仕組みとなった。今年1月には、輸入小麦の価格引き上げ、原材料やエネルギーの価格高騰などを理由に購買部におけるパンメーカー商品の値上げを行っている。

 

また9月から、8月末にサービスを終了した「学食パス」に代わり「大学生協アプリ(公式)」学食マネーが決済方法として導入されている。「今後も皆様の意見を聞きながら頑張っていきたい」と話す。

 

(三尾真子)