毎週水曜日にnews zeroに出演中の辻愛沙子氏へのインタビュー記事も残すところ後半の2回。前半2回の前編、後編では2022参院選に関連して、投票率を上げる取り組みをしている辻さんならではの政治の捉え方を深掘りした。後半2回では、多方面で活躍する辻さんご自身の思考・アイデンティティに迫り、連載記事を総括する。
後半2回の前編となる今回は、辻さんご自身の思考・アイデンティティに迫る。
辻さんのバックグラウンド
彼女は、類稀な行動力を持つ。そのルーツは小さい時からの経験にある。一貫校の私立女子校に幼稚園から通う中で、自身を取り巻く環境がずっと同じであることに疑問を抱いた彼女は、中学生になってから海外留学を両親に直談判した。日本でなく海外、日本人だけでなく多人種、女子校でなく共学校、実家通いでなく寮暮らし、と環境を真逆にしたかったという。
想像できない世界を見てみたいという思いを実現させた結果、たどり着いたのがスイスだった。宗教や文化などバックグラウンドが異なる友人に囲まれ、それぞれの生徒の個性が輝くことが良しとされる学園生活の中で、自分とは何者かを意識して考えるようになった。友人と過ごす時間が多い寮生活において、自己と向き合う一人の時間を意図的に作っていたという。自己と向き合った上で、みんなの共通項を探すのではなく違いを認め合い、全員が違う人間であるという当たり前を痛感した。
中学生で下した単身渡欧という大きな決断は、その後の彼女の人生を大きく左右するものだった。米国の高校卒業後は、海外の美大への進学と迷ったが、海外大と比べて専攻を絞るのが遅く、多分野を横断的に学べることから慶大環境情報学部へ進学した。この決断の背後には、「自分は結局日本のカルチャーが好き」という思いもあった。原宿ファッションやミッシェル・ガン・エレファントが好きだという彼女は、自身のアイデンティティの原点に戻ってきたのだ。
辻さんの挑戦3本柱
彼女が行う挑戦は幅広い。代表取締役社長を務める株式会社arcaでは、「クリエイティブアクティビズム」を掲げ、動画やデザインの製作を通して、社会へメッセージを伝える。クリエイティブディレクターとして他企業と協力する中で、スタートアップ企業を成長させるべく挑戦を続けている。
同じく代表を務める一般社団法人GO VOTE JAPANでは、選挙権を持つ人々の投票率を上げる取り組みを主導する。特に若者の政治参加へのハードルを下げるべく、SNSなどを通した発信の手助けを行う。従来の策にとらわれない、令和の時代ならではのキャンペーンを通じ、社会への働きかけを行っている。
他方news zeroといった報道番組などのメディアでの発信では、若者の声を社会に届ける。さまざまな活動を行ってきた彼女ならではの多様な視点を通じ、情報の受け取り手への多角的アプローチを模索している。
辻さんは小さい時から、自らの意思で決断を下し、行動につなげてきた。その姿勢は今でも貫かれている。彼女は、さまざまな機会を逃さず、多様な人々と触れ合うことで経験を積んできた。常に挑戦する姿勢で、凝り固まった価値観に縛られず、新しい世界を切り開いてきたのだ。
辻さんからあなたへのメッセージ
彼女の挑戦の原動力は、「知らない世界を見たい」という好奇心、「なぜ?」と常に問う姿勢、そして社会はより良くなると信じる気持ちである。そんな彼女に大学生・若者へのメッセージをもらった。
「まず、自分のやってみたいこと・目の前にあるものにまっすぐに取り組んでほしい。この社会で上手に生きなければならない、正解を出さなければならない、と自分にプレッシャーをかけず、自分一人にフォーカスする時間を確保するのも肝要だ。そうすることで、他人のことを気にせず、自分自身の力を高められる。特に慶大のような大学では、周囲に頭が良いなと思う学生もいるだろうし、つい周りと比較してしまうこともきっと少なくない。それでも、どうか自分の軸をぶらさずに生きてほしい。加えて、週一日でもよいから日本社会の未来について想像する時間を設けて欲しい。厳しい時代を迎える日本の未来に思いをはせられる自分を信じるべきだ。」
いよいよ4回にわたるインタビュー記事の最終回となる次回は、記者が辻さんへインタビューをする中で感じたことを記し、記事を総括します。お楽しみに!
(持松進之介)