慶大総合政策学部4年の柴垣貴也氏は、ファクトチェックの推進に取り組む認定NPO法人ファクトチェック・イニシアティブでインターン業務を行っている。実際の作業や誤情報への向き合い方について話を聞いた。
真偽の怪しい情報をデータベースに
柴垣氏が行っているのは、主に真偽の怪しい情報を集めてデータベースに登録するという作業だ。ファクトチェックをするにも、そもそも真偽不明かつ社会で拡散されていたり、社会的に意義があったりと、ファクトチェックするべき情報自体が必要だ。このデータベースをもとに各メディアがファクトチェックを実践できるよう、まずはファクトチェックの対象となるような情報を集めるサポートをしているという。
ファクトチェックに興味を持ったのは、信頼できる情報の必要性を感じたことがきっかけだそうだ。2020年にコロナの感染者数や病床ひっ迫数を示すサイトを開発していた柴垣氏は、社会が混乱して多くの情報が飛び交い信頼できる情報がどれだか分からなかったのだという。正しい情報の重要性を知り、興味をもつなかでファクトチェックを見つけた。
ファクトチェックは本当に誰でもできる?
ファクトチェックの実践について柴垣氏は、PCであれば画像をすぐに検索する等簡単に行うことができるという。画像検索は普段使っているスマホでは難しい部分もあるが、複数の情報源を参照する、リプライの中で「この情報は怪しい」という意見があれば疑って調べる、情報源を調べるといったことは誰でも行うことができる。
一方、「ファクトチェック」という言葉をめぐる理解に危機感があると指摘する。昨今、ファクトチェックを都合の悪い情報を否定する材料のように使われているケースがあるという。これは「フェイクニュース」という表現のケース(連載第1回参照)ともよく似ている。ファクトチェックは不都合な情報を否定するものではなく、単に事実かどうかだけをチェックするものだ。誤った解釈や見方をされてしまうことは、ファクトチェックの信頼性を失わることにもつながる。
誤情報への向き合い方
最後に誤情報への向き合い方について、情報を調べることのほかに、情報の特性を理解することが大切だという。情報はだれかが何かしらの目的をもって発信している。重要なことを知らせてあげたり、あるいはイデオロギーや主張を広げたりと、その情報の裏には何か目的がある。それがなにかを考えながら情報を見る姿勢も大切だ。
誤情報は社会が混乱したときほど流れやすい。そんな時こそ、情報を拡散する前にいったん立ち止ることが重要になる。自分が絶対に正しいという認識を抜け出し、自分が誤っているかもしれないという意識のもとで情報に向き合うことが、誤情報のまん延を防ぐ手がかりになる。
「多くの人がファクトチェックの要素を身に着けることで、情報を疑って調べるようになる。これは民主主義を鍛えるということにもつながる」
(乙幡丈翔)