この春、日吉台地下壕(慶大日吉キャンパス内)の定例見学会が再開された。2年ぶりの開催ということもあり、数か月先まで予約が入っている状況で、毎月の見学会は盛況を博す。初夏の日吉では、地域の住民や子ども連れの家族がガイドの話に耳を傾け、平和について真剣に学ぶ姿が見受けられた。

見学会では、感染対策のため人数に制限が設けられ、参加者は小グループに分けられる。コロナ禍以前と比べて開催頻度も少なくなった。だが、日吉台地下壕保存の会の会長である慶應義塾高校の阿久沢武史教諭は、状況を好意的にとらえる。

「30人まで人数を制限しているが、本当はこれくらいが見学会の人数として適切。見学者とガイドとの間の心理的距離が近くなったと思います。コロナ禍によって見えてきたこともある」

日本が終戦を迎えたのは、今から77年前の夏。慶大日吉キャンパスに連合艦隊司令部が移設され、地下壕の建設がはじまったのは、その前年の9月だ。戦艦大和の出撃や特攻作戦、沖縄戦など、大戦末期に数々の重要指令が日吉の地から発せられた。

構内に大規模戦争遺跡を有する大学は、世界的にみても異例中の異例。実際に現在、海外で戦争が起きている状況で、日吉の地下壕に対する社会的な関心も高い。阿久沢教諭は、「ぜひ、地下壕に実際に入ってみるという経験をしてほしい。自分の身近なところから戦争や平和という問題を考えていくことが大切だ」と語った。

見学会の詳細や申し込み方法などについては、「日吉台地下壕保存の会」の公式ホームページを要確認とのこと。参加者には全年齢対象のガイドブックが配布され、日吉の歴史について詳しく学ぶことができる。ぜひ読者の皆様もご家族やお友達とお誘いあわせの上、ご参加いただきたい。

 

石野光俊