近年ホテル開発が進む横浜は、今改めて注目されている。読者の中にも横浜に魅力を感じている人もいるのではないだろうか。そこで、横浜が注目される理由やその魅力について、横浜観光コンベンション・ビューロー経営企画部企画課課長の青木さんに話を聞いた。
近年多くの一流ホテルが横浜に開業する理由は?
近年横浜では外資系ホテルの開業が特に目立っています。パシフィコ横浜を中心に、市内で行われるコンベンションや学会などのMICEがコロナ前までは非常に活発に開催されており2020年に開業したぴあアリーナや2023年に開業予定のKアリーナ横浜など、10000〜20000人規模の大型ホールの大型集客も見込んで、そのポテンシャルを感じたホテル事業者が多く参入したのだと考えます。みなとみらいエリアの開発は、主に東京に本社がある企業や日本進出を考えている海外企業などを誘致しています。ホテルをみなとみらいに集約することで、これら企業集積とビジネストリップを結節させることも重要だと考えます。
多くのホテル開発の対象は、コロナ収束後の外国人観光客の方なのでしょうか?
一概にそうではないと思います。もともと横浜市内の外国人観光集客は全体の15%~20%程度しかありません。しかしインバウンドの少ない一方で、コロナ前のホテルの稼働率は日本全国的に見ても高い90%程度の状態でした。来街者数に対して宿泊施設が少ないということも考えられますが、それ以上に横浜に宿泊していただける国内観光客の方がたくさんいらっしゃったのだと思います。
観光事業者にとっても横浜の魅力は?
横浜が選ばれている理由として、海から観光スポットまでの距離の近さと空間の心地よさがよく挙げられます。東京都内で宿泊先に選ばれる都市は新橋、銀座、六本木、渋谷、新宿、池袋などありますが、どのエリアもビルがたくさん立っていて空の視界が狭く感じるかもしれません。一方で横浜は、特にみなとみらいから山下公園のエリアで空が広く見え道幅が広い。横浜は綿密に都市整備の観点で設計された街で、歩行者が歩いていて心地よい街づくりをおこなっています。駅の配置や電柱の配置まで本当に細かいところまで計算して作られました。このように都市デザインの考え方を踏襲して来訪者に心地よい環境与えているということが横浜が注目される1番の要因だと思います。それに加えてホテル周辺に飲食店ショッピングゾーンそして観光施設、コンベンション施設が集積しています。これは日本全国で見ても珍しい観光要素だと考えます。
多くのホテルが開業していますが、それでもまだホテルは必要なのでしょうか?
いま世界的に観光人口が増えています。世界的には収入格差などの問題がありますが、全体で見ると裕福な人が相対的に増えており、旅行する人も増加しているんです。市場が膨れ上がっているので、それに合わせて受け皿であるホテルにもいい影響が渡っている状態なのです。これらを踏まえると、もう少しホテルが増えてもよいと考えます。
これからも横浜は開発が進み注目され続けると思いますか?
そうですね。横浜の街づくりは常にどこかで開発が続くものと考えています。また、開発が進むとともに、観光の目的も多様化していくので、いかにパーソナルに合わせた観光を提案していけるのかが大事だと考えています。たくさんの人を呼び込もうというこれまでの潮流も変わってくると思います。これからはいかに横浜の価値をわかっている人にその対価を払ってもらうかという戦略になると思います。
横浜の日吉キャンパスに通う慶應生に横浜の魅力を教えてください。
当財団は、昨年度から渋谷区観光協会と連携協定を結んでいます。東急東横線のつながりで相互送客を実現するためにいろいろなプロジェクトを検討しています。慶応生の皆さんには、都内だけでなく横浜の方にも遊びに来ていただきたいですし、渋谷横浜間の沿線にある大学として、色んな魅力を見つけてもらいたいです。
私個人的には横浜の魅力は船のある風景かなと思っています。横浜はクルーズ船が入ってくるため、計算されたスカイラインとランドスケープがあって横浜のビル群が美しいシルエットになるよう設計されています。船の汽笛とも調和し、五感で水辺を味わうことができます。横浜といえばみなとみらい、中華街、横浜駅が定番観光スポットですが、ぜひ慶應生には学生目線での横浜の魅力を見つけて欲しいです!
最後にこれからの横浜についてお聞かせください。
近頃みなとみらいや横浜駅や中華街では、日中の人数はコロナ前水準まで戻ってきています。ただ、夜の来街者数は依然として戻ってきてないのが課題です。これからは夕方以降の時間にどう楽しんで頂くかを考える必要があると思います。それに伴って観光客の方にホテル滞在を楽しんでいただきたいと思います。しかし観光的魅力を作るには、まず横浜市民や横浜に通勤通学するなど、横浜に関わる人達こそ、横浜の夜を楽しむ文化が根付いているかどうかだと思っています。その上でも、10代20代前半の学生に夜の横浜に来ていただいて「どういったところが面白いか」「こういったところが東京の方が面白いから東京に行ってしまう」といった意見をお寄せいただければと思います。
また、横浜の開発についてですが、みなとみらい用地がほとんどなくなり一通り開発は完結しました。次に注目されるところは関内から山下公園にかけたエリアです。2020年に新市庁舎が完成したので、これから旧市庁舎跡地周辺の再開発が行われます。関東学院大学が大きなキャンパスを関内に設立予定など「学生の街 関内」がこれから形成されていく可能性を感じています。この新聞を読んでらっしゃる方にとってはまだまだ先の話かもしれませんが、横浜に少しでも関わっていただいた皆さんには注目していただきたいですし、応援していただきたいなと思います。
これからも進化が進む横浜に目が離せない。読者の皆さんも横浜に足を運んでみてはいかがだろうか。
(外川結奈)