「日本で一番の應援をしたいと思っています」
真っ直ぐな瞳でこう語るのは、慶大應援指導部に所属している2年生。14日に新体制を発表した同部では、雰囲気の面でも新しい風が吹いている。
伝統ある部活動で想像できるのは、「先輩がひっぱり下級生はついていく」という構図。しかし、應援指導部では、学年を問わず部員が意見を出し合い、部をより良くしていくために動いている。
今回は、チアリーディング部の4人と吹奏楽団の1人、合計5人の2年生に、部内の様子や現在の思いを聞いてみた。
――みなさんが今、力を入れていることは何ですか?
Kさん(チアリーディング部):私は小さい頃から野球の慶早戦に足を運ぶなかで、應援に憧れてきました。慶應を目指したのも、應援指導部に入りたかったからと言ってもいいくらいで、現在も思いを強く持って活動しています。なので、特に野球の試合は力のこもる舞台です。春季リーグではサブサブ(各試合につく試合の担当者)を務め、部の中でも先頭に立ったことで、実り多い経験ができました。
Yさん(チアリーディング部):私はダンスに力を入れています。私たちが取り組む踊りが一般的なダンスサークルでの踊りと違う点としては、やはり「應援」という目的が大きいです。劣勢の時こそ声を出すなど、試合の空気を変えられるように尽力しています。また、「慶早戦まであと〇〇日」と食堂に掲示するなど、塾生を盛り上げるような企画を行っているのも、お伝えしたい部分です。
――1、2年生の頃から幅広く活動できる環境なんですね。
Tさん(吹奏楽団):はい。僕がこの春中心に取り組んでいたのは「鼓手」なのですが、これは太鼓の音で應援のリズムを作る役割で、應援の一体感や迫力を左右する重要な要素となっています。そのような立ち位置を1、2年生の頃から担えるのは貴重だと感じますね。
――1、2年生も精力的に活動されていることが伝わってきたのですが、1、2年生の中で共有されている意識などはありますか?
Yさん:私たちの行動指針の一つに「練習中は学年関係なし」というものがあります。これは一見すると、上級生が下級生に理不尽な態度を取らないための言葉のように捉えられがちですが、私は練習する中で、むしろ下級生に向けられた言葉なのではないかと感じるようになりました。3、4年生が決めてくださった練習メニューをただこなしていくだけではなくて、自分たちで考えながら取り組むことが大切だという認識を多くの部員が持っています。月末のミーティングでも、部員一人一人に発言の機会があり、1、2年生が主体性を持って活動しています。
Tさん:本日も深夜に、練習のしかたに関して部員から連絡が来て、練習をより良くするための話をしたところです。このように、意見を自分の中で留めずに、同期や先輩に共有して、実際に動いていこうという雰囲気がありますね。
――先輩との関係性はいかがですか?
Uさん(チアリーディング部):普段の練習中から、先輩方にも意見を聞いていただきますし、部の仕組みづくりに関してもGoogle formで考えを伝える機会があり、下級生の意見を全体で積極的に検討していただける環境です。私自身も、下級生の頑張りを見て自分も頑張ろうと思うことは多く、下級生が積極的に動いている状況は、部にとって良い刺激となっていると思います。
Kさん:最低限の礼儀は守りつつになりますが、率直に意見を言える環境はとても居心地がいいです。入部当初は、どんなに頑張って考えても、「先輩方には届かない」と思っていました。しかし、今は先輩たちから意見を求めてくださって、私自身、自分が部で新しく取り組む技術として提案した「タンブリング(宙返りなどダイナミックな演技)」が、今新体制で活動の柱の一つになっていることはやる気につながっていますね。
Mさん(チアリーディング部):例えば「スタンツ」は人を持ち上げる技であり、コミュニケーションが安全な演技のために必要です。そのため、普段の練習から意見を言い合える関係を作っておくことができているのは大きいと思います。全体の練習の流れを作るのは上級生ですが、その中の細かい練習の流れを考える役を任せていただくこともありますし、上級生とペアを組んで指摘し合う練習もありますよ。
――同期との関係性はいかがですか?
Kさん:新型コロナウイルスの影響で、全員で食事に行くことなどはできませんが、やはり應援中に同期っていいな、と感じますね。酷暑の中で應援していると、意識が朦朧としてしまって、空に向かって応援してしまうことがあるんです。その時に頑張っている同期を見ると、はっと我に帰ります。自分を高めてくれる存在ですね。
Uさん:各部門の担当が試合ごとに「学年目標」を発表しています。学年として達成したいことなどを全員で話し合うことで意識を高が高まっていると感じます。また、試合前には部門を超えて円陣を組むことで、他の部門と協力して応援をしているんだ、という気持ちが生まれています。
Yさん:私も、吹奏楽団とこんなに仲良くなれるとは思っていませんでした。やはり、「應援で慶應義塾を盛り上げたい」という軸があるのは大きいのかなと思いますね。
Mさん:部門を超えて新しいツールを頑張って導入している今の雰囲気に、私も刺激を受けていますし、熱い同期を尊敬もしています。一緒に、部を引っ張れるような存在になりたいと思います。
――塾生や體育會へのメッセージをお聞かせください。
Kさん:日本一の応援を届ける心づもりで、妥協せず、自分たちが應援席に立っている意味を考えながら活動していきたいと思いますので、その点をお伝えしたいです。
Uさん:私たちがいなくても試合は成立すると思います。しかし、私たちが應援することで、後押しができるよう、つまり、応援によって選手が100%の準備をしてきたものを101%にすることができるよう、頑張っていきます。
Yさん:社会人になっても「慶應」という1つの共通点だけで話が盛り上がることもあると聞きます。塾生のみなさんには、義塾全体を家族のように捉えて欲しいなと思っています。コロナ禍で、授業でさえなかなかつながりが感じられない時世ではありますが、應援によって、その繋がりを作ることができたらなと考えています。
Mさん:毎回の練習で技術面の高みを目指すことはもちろん、意味のある言葉で、選手の方々の心に届く應援をできる應援指導部を作っていきたいです。「應援指導部がいるから大丈夫」「慶應でよかった」と思ってもらえるように精進していきますので、塾生のみなさまにも、たくさん試合に足を運んでいただきたいです。
Tさん:私たちは、應援団でも應援部でもなく、「應援指導部」です。その名前のように、ただ自分たちだけが應援するのではなくて、企画や應援席での先導を通して自分たちが働きかけることによって、義塾全体の應援を作っていく役割があると思っています。應援の主役は決して私たちではなく、選手の皆さんや、塾生のみなさんです。引き続き熱い應援で、一緒に「若き血」を滾らせていきましょう!
1限の時間帯、しかも1時間にわたるインタビューであったにもかかわらず、笑顔で真摯に答えてくれた5人。その生き生きとした様子を見ているだけでも、何だか励まされるようだった。
(西室美波)