「机上の勉強より、実行することが大切」

 もし、あなたがビジネスについて勉強をしたくなったら、まずはじめどうするだろうか。大学で経営学やビジネスに関する授業を取ったり、本を読んで勉強したりと様々な方法がある。
 しかし、第一歩としていきなりビジネスコンテストに参加し、ビジネスを学ぼうとする人はいるだろうか。総合政策学部4年の深井瑛子さんは、その選択をし、数カ月で世界一の座に上り詰めた。
 彼女は1、2年生時、サークルのダンスに没頭していた。しかし、ダンスばかりしていてはいけないと感じ、本格的に途上国の貧困問題などのためにソーシャルビジネスを勉強したいと思った。
 そこで彼女は授業や本から学ぶのではなく、ビジネスコンテストに参加することを選んだ。その理由として「机上の勉強よりも実行することが大切。本には答えがあるが、ビジネスコンテストは、答えを自分で導き出さなければならないので、たくさん考える」と語る。
 そして昨年の夏、慶大のビジネスサークルKBCが主催するビジネスコンテストに参加。彼女は「『身体を洗う』ことをデザインするプロダクトを作る」というテーマで、商品のアイデアを考えた。
 その際に「手を洗うこと」に注目した。そのために次の2つの調査を行った。
1:駅のトイレに1時間いて、トイレの利用者が手を洗うかどうか確かめる。
2:マクドナルドで、一時間程度、食前に手を洗うかどうかを調べる。
 この調査結果は
1:女性のほとんどは手を洗っていたが、男性は手を洗っていなかった
2:食前に手を洗っていたのは全体の2%しかいなかった
 この結果を受け、よごれが可視化できないために、自分の手が不潔である自覚がもてないのでは、と彼女をはじめチーム全員で考え、「よごれがわかる石鹸」という商品アイデアを生み出した。
 その案はKBCのビジネスコンテストで優勝し、さらに10月にテキサス大学で行われたビジネスコンテストIdea to product (I2P) global competition 2009のテクノロジーアントレプレナーシップ部門でも1位を獲得。世界一になった。
 楽しみにしていた国際会議の日本代表などを諦め、38度の熱が出ても徹夜で勉強するなど、世界一になるための犠牲も大きかった。しかし、その見返りとして彼女は「グループにおける自分の役割と何事も頑張ればできるという自信を得た」と話す。
 それぞれのもつ可能性を、大学生活で最大限に発揮してほしいという彼女。「『大学生活は人生の夏休み』だと思っていた。でも、今しかできないことがたくさんあると思う。少しでも興味があることには挑戦してみるべき」と、塾生にエールを送る。
         (平松誠基)