本来は大学生の中で盛んで、外国語や異文化に触れる機会としてよく使われた「留学」。しかし、この2年間新型コロナウイルスの感染拡大によりなかなか留学できない状況が続いている。日本から海外に出国した人の数はおよそ99.8%減り、逆に海外から日本に入るのも相当難しい状況である。このような事情を踏まえ、最近は「国内留学」という新たな取り組みが浮上している。元々は海外の文化や英語が好きで海外に行きたい人に対して、いわゆる留学事前研修という形で行われた教育が国内留学という新しい名称で呼ばれることになったのだ。
今回は、学生を対象に1日間から4日間ほど英語漬けの環境で過ごす国内留学プログラムを実施している、東京都の体験型英語学習施設TOKYO GLOBAL GATEWAYのマーケティング担当鈴木さんに、「国内留学」の意義やプログラム内容について聞いた。総合面積約7000平方メートルで年間およそ11万人が利用するこの施設は、海外の留学先を再現した空港やホテル、薬局などで日常会話に挑戦してみることができる。これだけではなく、実際に留学で要となるキャンパスライフを学生たちに経験させるため、キャンパスを丸ごと再現したキャンパスゾーンもある。キャンパスゾーンは教室ばかりでなく、ブックストアなど本当のキャンパスにありそうな空間もある。さらに情報・メディア業界に興味がある学生のためのメディアラボまで、各々の好みによる教育が受けられるよう作られている。都内のコロナウィルス感染者数が減少しつつある現在、見学のために施設を訪れる大学教員の人数が前年と比べて4倍ペースで増えているという。
国内でもまるで海外にいるように感じられる施設を作った目的は、一体どのようなものなのだろうか。その目的は、日本の学生たちに多文化交流してもらうことだという。島国である日本の特徴や最近の新型コロナウイルスの感染拡大による水際対策により、他の国の人と接する機会がほとんどない現在。語学は機械翻訳の力を借りることができるかもしれないが、卒業後もし海外の人と一緒に働くことになった時に当たり前となる多文化交流を、グループワークによる探求学習を通じて楽しみながら体験してほしいとのことだ。昨今のウクライナ情勢についても、日本で自国のニュースだけを通してロシアやウクライナの事情を完璧に理解するのはできないからこそ、自国と異なる価値観の存在を経験として得てもらいたいのだ。その手段として、国際標準言語である英語が一番適しているため、また受験向けの英語に偏りがちだった日本の英語教育を補うため、国際交流や多文化理解を体験できるプログラムが設けられている。とりわけ世界共通課題である持続可能な開発目標(SDGs)などは、一から英語で学んだほうが他国との相互理解を図りやすいため、SDGsを英語で学ぶプログラムも開設されている。また、日本人が自国の文化や歴史を海外に発信することの大切さも欠かせないことから、ジャパニーズカルチャースペースも施されている。
鈴木さんは、この国内留学を通じて、英語がそれほど得意ではない学生や英会話の機会がなかった学生などから、幅広い分野において自分の言いたいことが伝わるようになり自己肯定感が得られたとの評価があったという。また、自分が知らない国の人と話すことにより友達も増え、実際に海外に行く前に自信をつけることができたという反応も多く寄せられた。
念願の留学生活も、すべてが変わる海外での生活であるため、やりたかったことが叶えられないときもあるだろう。それを準備するための予習として国内留学を経験してほしいと鈴木さんは話す。より充実な留学生活を送るために、必要となるスキルを身につけるのができるからだ。また、国内留学とは言っても、その経験は国内に限らない。国内留学を体験した大学生たちが、カンボジアのスクールを支援するための寄付金をクラウドファンディングで集める国際貢献活動インターンシップに英語で挑戦したことなど、国内留学を通じて更にできることが多くあるので、様々な経験をしてほしいという。そして、海外留学より国内留学のほうが費用も安く時間も自由自在に調整できる。そのため、外国人とは交流したいが諸事情によりそれを見送っている学生たちも、一つの選択肢として国内留学を考慮できるとのことだ。新型コロナウイルスに関わらず、履修においての問題や海外の治安が心配で、留学するのを躊躇する学生も少なくないだろう。限られた4年間で様々な活動をいかに成し遂げるか考える学生たちに、国内留学という新たな試みは限られた時間を有益に使える一つの手段としてその役割を果たしているのが窺える。
(国内留学生たちが挑戦した海外インターシップの例)
(パクテヨン)