古くは明治33年結成の「慶應義塾俳句会」を前身に持つ慶應俳句研究会。本記事では、彼らの俳句に対する想いや画期的な取り組みに迫る。
主な活動内容
項目 | |
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公式HP/SNS | Twitter:@keio_haiku |
部員数(男/女) | 現役10人(1:1) |
練習/活動場所 | コロナ前→三田部室、散策、会議室やカフェ コロナ後→オンライン |
日時 | 不定期(月1回程度、部員の予定に応じる) |
入部金・年間部費 | なし |
入部方法 | Twitterまたはkeio.haiku@gmail.comへの連絡 |
実績 | 2016年 第8回石田波郷新人賞準賞(小山玄黙「満帆」) 2017年 第9回石田波郷新人賞準賞(小山玄黙「煙」) 2018年 第6回星野立子新人賞(小山玄黙) 2018年 第9回田中裕明賞(小野あらた『毫』) 2019年 第7回星野立子新人賞(小野あらた) 2019年 第16回鬼貫青春俳句大賞(細村星一郎) |
各地を巡る“吟行句会”
一秒が二秒に変わるあざやかさ
上記は、慶應俳句研究会の部員による一句。個人で詠むイメージの俳句だが、それにサークルとして取り組むことで、新たな気づきと成長があるという。
コロナ禍以前は、月1回ほどの“吟行句会“を開催。日吉・三田といったキャンパス周辺だけでなく、横浜で鷹を見たり、中華街や浅草、渋谷の街中を散策したり….…と各地を周る。
見るものが限られていると、アウトプットにも限界が生じてしまう。そこで、さまざまな景色・情報をインプットし、創作の幅を広げてゆく。自然だけでなく、現代的なテーマを扱った句も印象的だ。
2022年度は対面授業が解禁されたため、吟行句会を再開する予定。目的地は部員の希望次第で、大学生活の楽しさと有意義さを両立できる環境が整っている。
リズミカルな“オンライン句会”
現在の活動のベースは、毎週行われる“オンライン句会”。これは5年ほど前から続く好評企画で、任意参加にも関わらず多くの部員が集うという。ルールは、LINEグループで幹事が出題したお題に沿って句を詠むというシンプルなもの。しかしながら、5分おきに10個お題が出され、1時間足らずで10句詠むというのだから驚きだ。
代表の細村星一郎さんは、「俳句には規則があるからこそ、それに沿って考えれば案外楽に言葉が出てくる。さらに短時間でぽんぽん句を出すこともある」と話す。オンライン句会は、俳句や俳人が持つリズミカルな感覚に即していると同時に、俳句への取っ付きにくさのようなものを解消してくれる。
ここで、オンライン句会で詠まれた句を少しだけご紹介。
お題「風」
・呼吸してくちびるの無き蜥蜴かな
・手花火が一瞬僕を見て消える
お題「美味しかったもの・こと」
・あきぞらに有刺鉄線生えてをり
・長き夜を長く思へる豚キムチ
この試みは、2021年7月25日(日)放送のBSフジ「タイプライターズ」をはじめ、多数のメディアで特集。次世代の俳句界を担う存在として注目されている。
つながりを生む、俳句賞「25」の運営
「俳句を詠みたい」という共通した想いは、大学の内外や異なる世代とのつながりを生む。俳人として活躍するOB・OGとの交流だけでなく、近年では俳句賞「25」の運営を行い、活動の幅を広げている。
俳句賞「25」は、慶應俳句研究会・早稲田大学俳句研究会・東大俳句が中心となって開催している、高校生向けの俳句コンテスト。4〜7名のチームが25句1連の作品を発表し競うという、俳句の個人戦イメージを覆すような取り組みだ(公式HP : https://www.haikushou25.com/ )。
俳句の世界には「俳句甲子園」という、高校生を対象とした大きな大会がある。慶應俳句研究会のメンバーも同賞出身者が多いのだが、「せっかく俳句を始めたのに俳句甲子園で終わり、というように、大学まで続けない人も多い」という課題が浮上。そこで俳句賞「25」では、学生俳句会が中心となって高校生と俳壇をつなげることで、未来ある俳人を失わない仕組みを提案したのである。
5・7・5の17音が、人の輪を広げてゆく。俳句に団体で取り組むからこそ、得られるものがあるといえる。
サークルとして俳句を詠むということ
現在のメンバーは元々俳句に興味があった者や、知り合いの紹介が多いという。「高校で詠んでいたけど、サークルってどんな感じか分からないな…」「興味はあるけど難しそう…」と悩んでいる方は心配いらない。ぜひ門を叩いてみてほしい。
新1・2年生に向けて
「慶應俳句研究会は、自由なサークルです。やりたいときにやりたいだけやればいいし、何かしたいことがあれば、皆で協力して取り組みます。少しでも俳句に興味があったら、まず一度覗いてみてください!」
(聞き手:楊美裕華)