近年、塾生の中にもコーヒーの魅力に惹かれハマる人が続出している。そこで、慶大経済学部在学中にコーヒーショップ(LIGHT UP COFFEE)を起業し、バリスタとしても活躍する川野優馬さんに話を聞いた。コーヒーの魅力や夢を追い実現させた川野さんの大学生活の過ごし方に迫る。
ーーまず、読者の塾生にコーヒーの楽しみ方を教えてください。
社会人に比べて時間はあると思うので、まずはいろんなお店に行って欲しいと思います。特に名前を挙げて紹介するのであれば、日吉キャンパスに通っている人は奥沢にあるオニバスコーヒーに、三田キャンパスに通っている人は正門前にあるパッセージコーヒーにぜひ行って欲しいです。ラテでもいいのでまずはお店で飲む、その中で興味あるコーヒーをブラックで飲んでもらって、さらに興味があれば豆を買ってドリップをそのお店に倣って淹れてみると、より継続して楽しんでもらえると思います。
ーーやはりコーヒーはアイスではなくホットで飲むべきなのですか。
飲みたいものを飲むのが1番だと思います。でも冷たいと味覚を感じにくいので温かい方が味や魅力は伝わると思います。
ーーコーヒーが苦手な人にコーヒーの楽しみ方を教えてください。
コーヒーは苦いという考えを持っている方も多いと思いますが、今はむしろ紅茶よりもさらっと飲めて、フルーティーで果実感が楽しいコーヒーもたくさんあるので、ぜひこのことをまず知ってほしいです。例えば「シングルオリジン」や浅煎りで焙煎するコーヒーなどです。
ーーコーヒーを通して伝えたいことはありますか。
僕は五感に気付く時間を届けたいなと思っています。そしてコーヒーによって五感に気づくことで自分はこれをおいしいと感じているんだなっていう自分を認識して欲しいと思います。デジタル社会で実体験する機会が少なくなってきていますが、コーヒーを飲むことで自分がリアルで感覚を持っているということを認識し、何かを始めるきっかけになったら嬉しいです。
ーー大学生活との両立は大変だったのではないですか。
店を作る決断をした3年生の時はお店作りのことしか考えてなかったので休学をしました。学生生活を延長してでも今やりたいと思ったことを優先したのです。しかし夏休み前のテスト期間にお店がオープンだったので、その時は寝られませんでした。僕はゼミに入らなかったので卒論はなかったのですが、その分単位を取る必要があったためテスト期間は大変だった覚えがあります。
ーー大学生活の印象深い思い出はありますか。
1つ目は友人と語学留学でロンドンに行ったことです。初めての海外旅行だったので当時の僕にとって大きな冒険でした。この留学のおかげで良い意味で自信持って考えられるようになりました。
2つ目はコーヒーを学ぶために1ヶ月間ヨーロッパのコーヒー屋さんを回ったことです。焙煎の様子を見させてもらったりイベントも参加させてもらったりなど、まるで10年学ぶ分のコーヒーを学んだような、とても充実した1ヶ月でした。
ーーこれから挑戦したいことは何ですか。
1つ目としては、焙煎所の役割を果たす新しいお店を作りたいというのがあります。コロナ禍になってから、飲食店に行くとなるとより目的をもって行くようになりましたよね。そのため来てもらう理由とかきっかけとか面白いと思う体験を提供したいので、焙煎の様子を見ることができる体験施設のようにしたいと思っています。
2つ目は、インターネット上でのコーヒーの販売や情報の発信を増やしたいです。実際に飲んでもらえないと味の良さが伝わらない面もありますが、まだコーヒーの魅力が届いてない人にはインターネットを通して伝えられると思っています。なので、インターネットを通して淹れ方のセミナーなど魅力を伝える活動をして、もっとネットでの販売数も増やしていきたいです。
3つ目は、コンテナ(1つで18トン)でコーヒー豆を買いたいと思っています。通常の場合、現地の輸出業者が港で船にコーヒー豆を詰めたコンテナを送って、日本の受け入れる側の商社が僕らコーヒー屋さんに分けてくれるという感じなんです。そうじゃなく産地から直接輸入することで、自分たちの目でコーヒーを買うことができるし、良いものに対して適切な価格設定が可能になる、そういう買い方をしていきたいです。
4つ目はコーヒー豆の生産拠点を増やしたいというのがあります。今僕たちはインドネシアのバリ島とベトナムでコーヒーを作っていて、もう1つ拠点を増やしたいなと思っています。
これらすべてに共通する思いは、美味しいコーヒーを飲む機会をたくさん提供したいという思いです。
ーー1度就職されているとうかがったのですが、その時のお話を教えてください。
僕は、リクルートで働きながらもう既にコーヒーの事業を起業しているという形の特殊な進路だったんです。そのあと退職して個人でやっていたコーヒー屋さんを法人化して株式会社にして、今運営しているって感じで。そういう経験の中で伝えたいのは、就職するうえでの選択はすごく大事だということ。普通は、働かなきゃいけないから就活するみたいなネガティブ発想で選びがちですよね。でも、ほんとにそれはよくないと思います。
ーーリクルートに就職した経験で今に生きていることはありますか。
インターネットに触れてスキルがついたことです。基本的に好きなことをたくさんさせてくれたのでさまざまな経験を積むことができました。今もコーヒー豆を売る上でインターネット関連の知識はすごく役に立っています。もう1つ良かったことは、仕事の優先順位のつけ方が上手くなったことです。やることがたくさんある中で、これをやったあとにこれが効いてくる、これは少ない時間で大きい効果が得られるから先にやろうなど、そういう考え方が身についたと思います。
ーー塾生へのメッセージをお願いします。
とにかく自分の興味あることに時間を注ぎ、全力で片っ端から経験して欲しいと思います。大学生の4年間はそれが許される最強の4年間だと思うんです。慶大は自由に動く上では強いコミュニティだと思います。なので、1人で単独行動するっていうよりは、波長のあった友達と行動するのもいいと思います。その点で慶大は日本で1番最強な大学だと僕は思うので、人生の目的を仲間とのたくさんの経験から見つけて欲しいなと思います。
(外川結奈、松本彩花)