あなたは「フェアトレード」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。開発途上国と先進国の貿易は先進国に有利な構造があり、安価で便利な製品を私たちが手に入れているという事実は、開発途上国の人々の低賃金と劣悪な労働環境によって成り立っている。その不平等をなくし、労働や生産される製品に見合った正当な価格で継続的に取引をする仕組み、それがフェアトレード(公平・公正な貿易)だ。

日々、多くのものを消費している私たちにとって、貿易における貧困問題はとても身近な課題であり、持続可能な社会を目指す現代において、フェアトレード商品はなくてはならないものだ。しかし、日本フェアトレード・フォーラムの意識調査によると、国内の認知率は約3割にとどまる。

そこで、今回日本のフェアトレードを先行し、フェアトレード商品を数多く扱うイオントップバリュ株式会社(以下トップバリュ)の商品開発本部商品マーケティング部の水越美登利さん、増岡理恵さんに、フェアトレード商品について理解を深めるため話を聞いた。

取材に応じてくださった水越さん

取組のきっかけは「お客さまの声」

なぜトップバリュはフェアトレード商品を扱うことになったのだろうか。「2002年に『お客さまの声』がきっかけで取組を開始しました」と水越さんは語る。「お客さまの声」というのは、コールセンターやwebサイトなどさまざまなところから送られてくる顧客の意見や感想のことである。手軽に国際貢献をしたいという意見が届けられたことが、トップバリュでフェアトレード商品を開発するきっかけになったのだという。また、フェアトレードがイオンの基本理念である「お客さまを中心として『平和』『人間』『地域』を尊重すること」にふさわしかったことも商品開発に踏み切る後押しになったそうだ。

日本のフェアトレードを先行する存在に

トップバリュは、日本でまだフェアトレードという言葉が浸透していない頃からさまざまな取組を行っている。たとえば2014年からは国際フェアトレードラベル機構の「国際フェアトレード認証調達プログラム」にアジア唯一の企業として参加している。このプログラムの特徴は何年までにフェアトレードの原料をどれくらい使うのかという具体的な期間と量を公表しないと認証が取れないところだ。トップバリュは2020年までに認証カカオの調達量を10倍にすることを宣言し、2012年から2020年までの間で調達量を6トン弱から60トンまでに拡大することに成功した。

フェアトレード商品(チョコレート)

フェアトレードの認知度を高めるために

フェアトレードの認知度は世代によって異なる。「サステナブル消費調査」によると学校でフェアトレードや環境について学んだZ世代はベビーブーム世代よりもサステナブル消費志向が強いという。全世代にフェアトレードを認知してもらうにはどうしたらよいのだろうか。

一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会の「国際認証ラベルに関する調査結果」によると、「あなたは普段どこでマーク(認証ラベル)を目にしますか」という問いに対し国際フェアトレード認証ラベルを見かけるのはスーパーやコンビニ、ホームセンターなどの小売店が多いという結果であった。水越さんは「とにかく店頭でフェアトレード商品が目に留まるように工夫しています。フェアトレードの説明が書かれたポップを店頭に設置したり、プロモーション動画を作成したり認知度を高める工夫をしています。商品パッケージにはハートのマークにFAIR TRADEという文字をつけるなど、フェアトレード商品と一目で分かるようなデザインにしています」と認知度を高めるための工夫について話す。そのような取組の甲斐もあり2011年には41万個だったトップバリュのフェアトレード商品の販売数は2017年には約500万個を達成した。

今後の展開

トップバリュの今後の取組についても話を聞いた。扱うフェアトレード商品は、コーヒー、チョコレート、ジャム、紅茶など多岐にわたる。「2030年までにプライベートブランドのチョコレートに使用するカカオを100%フェアトレード化、プライベートブランドコーヒーも100%持続可能なものにすることを目標としています」と水越さん。かなり高い目標設定だが、ここから途上国の低賃金労働やそれにおける貧困、児童労働問題を解決しようという企業の熱意が感じられる。

高価になりやすいフェアトレード商品

フェアトレード商品というと高価になる傾向があり手の届きにくいイメージがある人も多いのではないだろうか。その点をトップバリュはどうしているのだろう。この謎の解明にはトップバリュがイオンのプライベートブランドであることが関わっている。プライベートブランドとは、本来自らの商品を企画・生産しない業態の企業が独自に展開している商品のことだ。「トップバリュは計画生産、製造した商品の全量買い取り、製造委託先から直接商品を引き取ることで流通を効率化する等のプライベートブランドの特徴により、コスト削減に努めています」と水越さんは語る。また、CMを多くは放映せず、できる限り営業費や宣伝費を削減しているそうだ。その結果、高価になりやすいフェアトレード商品を消費者に優しい手頃な価格で販売することにつなげている。トップバリュの人気フェアトレード商品「トップバリュ グリーンアイ オーガニック&フェアトレード ダークチョコレート」は有機栽培かつフェアトレード製品で本体価格248円。「トップバリュ グリーンアイオーガニック オーガニック&フェアトレード ジャム」はトップバリュが直輸入し、サステナブル包材を使用したもので本体価格298/348円。どの商品も購入しやすい価格設定となっている。

フェアトレード商品を購入することは、貧困や貿易における不平等をなくしたいという、国や企業の枠を超えた個人の意思表示手段の一つである。昨今はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど普段買い物に行くような場所で、フェアトレード商品を見かける機会が多くなった。

「フェアトレードは特別なことではない。気軽に、継続して、日常に取り入れることが出来るものだ」

今度買い物に行く際には、ぜひフェアトレード商品を手に取ってみてほしい。普段購入している商品をフェアトレードのものに変える、それだけで国際貢献につながるのだから。

(横山真緒)