事業仕分けの舞台に立って
行政刷新会議による事業仕分けが11月に行われた。事業仕分けは、民間シンクタンクの構想日本が考案した予算効率化の手法。外部からの評価者(通称、仕分け人)が、行政事業の存廃、適正な予算などを公開の場で議論する。
官僚に厳しい態度で臨む仕分け人の姿や評価結果などが多くの関心を集めたが、どのような想いのもと仕分け人は事業の判定を行っていたのか。
行政刷新会議の第2WG(担当―外務省、厚生労働省、経済産業省)で仕分け人を務めた、土居丈朗教授にお話を伺った。
―どのような経緯で仕分け人になったのですか
私の場合、構想日本による別の事業仕分けに参加したことがきっかけでお誘いを頂きました。ここまで注目されるとは思っていなかったですが、既に経験済みだったので迷いなどはありませんでしたね。
―今回の仕分けの意義は
これまで政府の予算案が国会に上程された後で修正されることは稀でした。予算について根本から本質的に問い直すことは与党や行政府の内部でしかできないのですが、予算内容が修正できる段階で仕分けをして国民に対し公開ができました。
―期待ほどの削減額には至らなかったようですが
金額的に切り込み不足という感は否めません。あまり横串(判定結果を事業仕分け対象外の類似事業にも広げること)が刺せなかったことも残念です。
しかし予算獲得のためには美辞麗句だけではなく、より深い説明が必要だという強いメッセージを送ることができました。この影響は時が経つにつれ強まっていくと思います。
―仕分け人の適性を問う声もありました
特に不適切な人が選ばれていたという印象はありません。仕分けの人選に関して批判をするならば、各省庁の審議会の人選も同様に問うべきです。
―判定のための準備期間は適切なものでしたか
結果的には過不足のないものだったと思います。しかし予算編成は時間との勝負。準備期間が長いほど良いとは一概に言えません。限られた時間の中で最大限の働きをすることにただ努めました。
―対象となる事業の選定基準などが曖昧だという批判もありますが
時間の制約上、実施が自明とされた事業は対象から除外されていました。また制度的に一般会計の財源に充てることのできない特別会計なども手つかずで、違和感を覚えた方もいるかもしれません。今後、事業の選定過程の透明化が進む可能性は十分にあると思います。
しかしどんな決定も、恣意的だという批判や賛否が分かれることを完全に避けることはできません。最終的には、各人が選挙の時に政府の行ってきたことの是非を判断し投票するほかないと思います。
政治主導の責任のもと、最終的な決断を
―先生の考える、今回の仕分けの改善点は
各省が概算要求を提出する前に実施した方が、摩擦が少なく虚心坦懐に議論ができると思います。
―判定に法的拘束力などを持たせるべきと考えていますか
全く考えていません。政治主導の責任のもと、最終的な決断をするべきです。
仕分け後、判定に対し反対が出たことも不当だとは思っていません。ただ財源に関する点までしっかり言及してほしかったですね。説得的な議論もありましたが、それを仕分けの場で官僚自らが展開できなかったのは問題です。
―学生には財政をどのように見てほしいですか
「ノーフリーランチ(ただ飯は食えない)」、恩恵のためには必ず負担が必要となるということを意識してほしいと思います。
自分一人が認識を変えたところで直ちに政治は変わらないと感じている人もいるかもしれませんが、長い目で問題意識を育んでほしいですね。
―ありがとうございました
聞き手=花田亮輔