近年、箱根駅伝に大学として出場する姿が見られない慶大。慶應義塾體育會競走部は、2017年に創立100周年を迎えたのを機に「慶應箱根駅伝プロジェクト」(HEP)を発足し、箱根駅伝への参加に向けてさまざまな取り組みを行っている。そこで、慶大の箱根駅伝本戦復帰への道のりについて、長距離ブロックの保科光作ヘッドコーチと、長距離ブロック長の前原裕磨選手(政3)に話を聞いた。


 

まず11月に行われた予選会では、田島公太郎選手(環1)の関東学生連合チームの選出が決定した。この結果を受けて保科コーチは、「1年生ながらチームのトップでゴールしてくれたことは、今後にも繋がると思います。今年度同様、箱根駅伝本選への復帰を本気で狙えるチームになっていくという期待も大きい」と語った。前原選手も、「慶應史上、1年生で関東学生連合チームに選出されたのは初めてのことです。1年生ながら予選会で好成績を残すことが出来たことで、長距離ブロックだけでなく、上級生やチーム全体に対してもいい刺激になったのではないでしょうか」と話した。また、「田島自身の日々のしっかりとした走りや生活態度が、今回の結果に繋がりました。一選手として、見習っていきたい」と振り返った。

 

(写真=提供)

 

一方、予選会ではチームとしての課題点も見つかった。保科コーチは、「学生たちが主体となってチーム作りに取り組んでいくことが重要になってくる」と強調した。「チーム作り」に関して前原選手は、「上級生の杉浦(選手・政4)たちが築いてくれたチームの基礎を引継ぎ、より発展させていきたいです。例えば、選手が行う毎月のミーティングでは、各選手やチーム全体としての課題点をより明確化するようにしています。さらに、昨年の反省点として、箱根駅伝に向けて1年間集中力を保って練習することができなかったことが挙げられます。その観点からも、分業制度といった、選手一人一人がより当事者意識を持てるようなチーム運営に励んでいます。箱根につながる目標を常に立て、来年度の箱根予選会に向けての共通意識が持てるように努めています」と述べた。

 

「慶大の長距離部員は、箱根の常連校や強豪校と比べて、入部時の実力は劣っている」そう語る前原選手だが、だからこそ慶應義塾體育會競走部として箱根駅伝本戦への復帰を目指すことに、大きな意義があるという。

「選手たちは、コーチの指導のもとで切磋琢磨し合いながら成長することで、箱根を目指していると自信を持って周りに言えるようなレベルになっていく。二流、三流とも言えないような無名選手たちが箱根駅伝を本気で目指すところに、ロマンがあるのではないでしょうか。スポーツ推薦がないような大学が目指すからこそ、大学スポーツ界に対してアピールできる面もある。そして、学生の本分である学業と体育会活動を両立しながら本戦出場を成し遂げるところにも、他大学にはない魅力があると考えています」




また、「慶應箱根駅伝プロジェクト」の開始前後では、選手の中で変化があったという。保科コーチは選手たちのやりがいが変わったことを挙げ、「彼らは口で『目指す』と言うだけではなくなった。実際にトレーニング内容や生活態度を改善するなど、行動が伴うようになりました」と評価した。また、特定の目標に向けたプロセスを頑張り、楽しむことが出来る力は、社会に出てからも役立つのではないかとも語った。

 

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インタビューの最後に前原選手は、「僕たちは箱根駅伝を本気で目指しています。来年度を走る選手たちも実力は十分にあり、今年同様、箱根駅伝を本気で目指せるチームになってくると信じています。僕たちがやれることは、1年後の予選会を突破すること、ただそれだけを見て1年間高い集中力を持って日々の練習に励んでいくのみだと思います。チーム一丸となって頑張っていきたい」と締め括った。コーチ・選手ともに、箱根駅伝本選に復帰することへの熱意が感じられ、今後の選手の活躍に期待が高まるばかりである。

 

(柴田憲香)