三田祭最終日である23日。13時より西校舎ホールで開催されたのが、「アナウンサー発掘グランプリ」だ。「原石を発掘するのは、あなた」をテーマに、アナウンスサーを夢見る女子塾生5人がしのぎを削る。観客による投票と審査員長の評価を総合して、グランプリを決定するのだという。

審査員長を務めたのは、フジテレビの渡邊渚アナウンサーだ。2020年に経済学部を卒業した彼女は、「もしもツアーズ」のツアーガイドを担当し、「めざましテレビ」に出演するなど、活動の幅を広げている。また、司会進行を務めたのは、お笑い道場O-keis所属の中村さんと藤原さんだ。

 

一つ目の競技は、自己PR対決だ。渡邊アナは「自己PRから入社試験から始まるし、アナウンサー以外でも自己PRは必要」と、自己PRの重要性を語った。この競技は、エントリーナンバー順に行われた。

エントリーナンバー1番は、日高梨々香さん。参加者の中で唯一アナウンススクールに通っていない日高さん。中高ではチアリーディングを通して人々を笑顔にしてきたという。これからは自分の表現で人々を笑顔にしたい、という思いを制限時間いっぱいまで熱く語った。

エントリーナンバー2番は、吉澤陽菜さん。唯一の1年生で、プレッシャーはありながらも自分らしく頑張ると意気込んだ。「ひとつ、武士のように強い信念」、「ふたつ、武士に二言はないので最後までやり遂げる」と、「令和の武士ガール」のキャッチコピーに合わせた力強い自己PRを披露した。

エントリーナンバー3番は、真田優華さん。クラシックバレエとバトントワリングで培った表現力をアピールした。「カメレオン系バレリーナ」というユニークなキャッチフレーズが印象的だった。

エントリーナンバー4番は、小田桐京花さん。青森出身という特徴と英語力を活かしたトリリンガルの独特な自己PRだった。最後に青森弁で呼びかけた様子と、標準語で流暢に話す様子は、観客の目に魅力的に映っただろう。

最後は、高石実梨愛さんだ。「ピアノが弾けないのに伴走者に立候補した」、「ショートスリーパーに憧れて3時間睡眠を実践した」というオリジナリティ溢れる自己PRだった。「『当たって砕けろ』の精神でも、スキャンダルには挑戦しない」という言葉は、観客の笑いを誘った。渡邊アナは、「自己PRってこんなに笑えるんだ」とコメントしていた。

 

2つ目の競技は、原稿読み対決だ。10秒の下読み時間で初見の原稿を見て、30秒間の制限時間でその原稿を読む競技だ。今回は、渡邊アナがくじ引きで順序を決めた。原稿の内容は、参加者ごとに異なり、「慶應におけるコロナワクチンの接種」という真面目な記事から、「湘南藤沢キャンパス付近の養豚場から豚が疾走する」という嘘のコミカルな記事まで多様な原稿がテーマに設定された。「鼻濁音がきれい」、「前を向いて読むのは難しい」という実践的なコメントが渡邊アナから寄せられた。一度噛んでしまっても立て直すという、参加者の実力が存分に見られた競技だった。

 

前半2企画が終わり、続いて後半戦。最初は、リポート対決だ。11種類のアイテムから1、2個を使って、フリーマーケットを模したステージ上で、体当たりリポートに挑戦するというもの。傘やロングブーツ、ニット帽、ぬいぐるみ、ランドセルなどアイテムは多岐にわたった。

一番目の挑戦者は、高石さん。ぶっつけ本番には慣れているが、やはり緊張しているとのこと。まずは、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のレプリカをピックアップ。贋作と呼んでしまい、一瞬会場をヒヤッとさせるものの、ハプニングを味方につけ来場者を笑わせた。

二番目は、小田桐さん。「代々木公園のフリーマーケットに来ています」、「店長さんにおすすめを聞いてみましょう」など自らの考えた設定で着々とリポートをこなしていく。アイテムの特徴のみに留まらず、映像では分からない自身の感想も伝えるなど、素晴らしい技術力をみせた。これには、渡邊アナも絶賛。

続いては、真田さん。まだ誰も触れていなかったロングブーツとランドセルを取り上げた。「シック」といった言葉を用いて女性なりのファッションの説明をするなど、視聴者の興味をひく喋りが高評価を得た。

四番目は、もうアイテムに目をつけているという吉澤さん。ぬいぐるみと傘を紹介。ライオンのぬいぐるみを片手にリポートをする絵面は可愛らしく、渡邊アナも癒されたという。

最後は、日高さん。チアリーディンググループの友人たちに声援で迎えられ、挑戦。ロングブーツのサイズ感や匂いを確認するなど、独特な側面をフィーチャーしたリポートが面白いと評価された。

 

最終対決は、事前に聞いていた好きなこと・ものの魅力について制限時間内に言葉だけで伝えるプレゼン力を試すというもの。

最初の挑戦者は、日高さん。東京都の離島、式根島にあるオレンジ色の地鉈温泉(じなたおんせん)をプレゼン。お気に入りの白水着を硫黄の色に染めてしまったというハプニングを面白おかしく披露した。渡邊アナも式根島を何回か訪れたことがあるようだが、温泉の存在を知らなかったという。

次の挑戦者、吉澤さんは、かの有名な戦国武将、織田信長をプレゼン。一見怖そうにみえて、実はビスケットや金平糖が大好きなスイーツ武士というギャップを紹介した。武士ガールというキャッチコピーにぴったりのテーマで、吉澤さんらしさが出ており良かったと渡邊アナもコメント。

三番目は、真田さん。映像に映った料理やポップカルチャーを実際に再現してみるなど、ラブコメのイメージが強い韓国ドラマの違った楽しみ方を熱弁した。

四番目は、小田桐さん。日吉の美味しいインドカレー屋をプレゼンした。「もっちもちのナンとあっつあつのカレー」など来場者のお腹を空かせるような食リポを実践し、好評価を得た。

ラストを飾るのは、高石さん。実は今年の共通テストや東大の二次試験を受けにいったという、受験マニアとしての一面を公言。受験通の先輩方と談笑したり、試験会場で記念写真を撮ったりと、謎が謎を呼ぶ、まさかのキャラクターに渡邊アナも興味津々の様子。

 

以上で、4つの対決が終了。票数の集計に入った。その間に、渡邊アナから本日の総評をきかせてもらった。みな堂々としており、聞いていて楽しく、自らが勉強させていただいた面もあった。お疲れ様でしたと労いの言葉をかけた。

 

挑戦者一人一人に対する感想ももらった。日高さんは、元気に話す姿が印象深く、その明るさを就活にもぜひ活かしてほしいとのこと。吉澤さんは、声が素敵で、その唯一無二の武器を大切にしてほしいという。真田さんは、緊張を感じさせない原稿読みが上手で、今後も頑張ってくださいとのこと。高石さんは、面白い話のネタが尽きず、知れば知るほど興味が湧く、そのキャラクターを褒め称えた。

 

そして、いよいよ優勝者の名前が書かれた封筒を渡邊アナが開封する。挑戦者が、みな一列に並んだ。栄えあるグランプリは、小田桐さんに決まった。渡邊アナからトロフィーと襷を受け取った小田桐さんは、感無量の様子。アナウンススクールで発声練習をするなど、地道な努力を続けてきた小田桐さん。アナウンサー発掘グランプリ優勝という、形ある評価を得られたのは非常に嬉しいという。最後に、渡邊アナは、本当に甲乙つけ難い戦いだったとまとめ、熱意とやる気に満ち溢れた挑戦者らを祝福した。

 

 

(山下和奏・野田陸翔)