三田祭初日、メインステージには力強い三味線の演奏が響き渡っていた。津軽三味線集団弦音巴は、総勢57名全員が塾生で構成されている公認サークルだ。今回の三田祭では総勢36名の奏者全員が和装でステージに立ち、普段よりも民謡の多いラインナップで迫力ある演奏を披露した。
1曲目は「六段」。津軽五大民謡のひとつ、津軽じょんがら節の構成曲で、津軽三味線の奏者ならだれもが知る曲だ。
2曲目は「疾走」。奏者全員が届ける力強い音色がピタリと止み、そして再開される。静寂もまた音楽であるということを我々に強く印象付けるものであった。
3曲目は「光芒(こうぼう)」。雲の中から射す一筋の光をイメージしており、コロナ禍の強い影響を受けた曲だという。多く楽曲内に組み込まれたソロパートの繊細さと、36人全員で奏でるハーモニーの迫力が強く印象付けられる曲であった。
4曲目は「津軽よされ節」。2つのメロディーが並行しつつも、重なって1つの曲として成立しており、その重なりを感じさせないほどであった。
5曲目は「雪月花」。ソロパートからスタートし、3人、7人と奏者が次第に増え、最終的に36人全員が同じ音を奏でる演奏に、三味線の力強さと繊細さを感じずにはいられなかった。
最後6曲目は「若煌(じゃっこう)」。この曲で世界大会団体準優勝をしており、ラストを飾るのにふさわしい曲だと言えるだろう。
彼ら36人108本の弦が一糸乱れず奏でるハーモニーは、静寂までをも演奏に取り込んでいたように感じられるものだった。
最後の演奏を終え、代表の小佐野さん(文3)に話を聞いた。「今回のステージ準備には、練習場所の問題や大勢のメンバーを統率する必要性など苦労する部分も多かった。しかし、今回三田祭のために戻ってきてくれたメンバーもいる。彼らとの思い出のある曲、彼らが好きな曲を選んで今回は演奏した。自分はこのステージが最後になるが、ついてきた後輩にはよくついてきてくれたな、という感謝の気持ちと大きな期待がある」と彼は語る。
そんな彼の後輩たちは、ミニステージにて23日火曜日12時20分からJ-POPなど多くの人に親しみ深い曲での演奏に挑む。なかなか普段目にすることのない津軽三味線に、多くの方が親しみのある音楽でその魅力を感じてみるのはいかがだろうか。