近年、多くのメディアで「昆虫食」が取り上げられ、注目を集めている。
その魅力や人気の商品について、昆虫食専門店「TAKEO」の創業者・齋藤健生さんに話を聞いた。
昆虫食の可能性
「TAKEO」が創業したのは2014年。まだ昆虫食という言葉が浸透していない頃だった。「私は以前、調理師をしていて、昆虫に食材としての可能性を感じていました。栄養面やエコな面が取り上げられることも多いですが、それらを第一に考えていたわけではありません。昆虫が肉や魚と同じように食卓に並び、食事の楽しさ・面白さが増えてほしいという思いでした」
昆虫食は、食材を飼育する際の環境負荷が小さく、たんぱく質が豊富だとされており、「未来のスーパーフード」とも呼ばれる。しかし実際のところ、エサを考慮すると環境負荷が小さいという根拠はなく、たんぱく質の量も肉や魚と比べると大差はない。齋藤さんは、あくまで食卓を彩る食材の一つとして昆虫食に着目したのだ。
記者も実食!
「TAKEO」の看板メニューと言えるのが、タガメのエキスが0・3%配合された「タガメサイダー」。香りはラ・フランスに近く、後味もスッキリしており、昆虫食の商品であることを忘れてしまうほどだ。
「国産コオロギの煮干し」も、代表的なメニューだ。同じコオロギであっても、産地や飼育方法によって味が変わるのだという。見た目は生きているときの姿そのままだが、勇気がいるのは口に入れる一瞬で、軽やかな食感と風味を楽しむことができる。
楽しさを広めるために
齋藤さんの考えは、純粋に昆虫食を楽しんでもらいたいというもの。昆虫を食べることに抵抗がある人には、無理に勧めることはしない。「昆虫食を楽しんでいる人がいて、それを誰かが見て『面白そうだな、挑戦してみたい』と思ってもらえるような事業をしていきたいです」。自らの活動を通じて、昆虫食の楽しさを人々に広めることが目標だという。
「将来的には、農家が育てた新鮮な昆虫や、子供たちが採ってきた昆虫をお母さんが調理する。このように、フラットに楽しめる昆虫食が食卓に並んでほしいなと思っています」。齋藤さんが描く昆虫食の未来は、日常の食生活のなかに昆虫を使った料理も並ぶような光景だ。
初めは少し勇気が必要かもしれない昆虫食だが、その体験は昆虫に対する考え方を大きく変える。昆虫食は今後、私たちの生活に彩りを与えてくれる存在になるだろう。
(田畑菜花)