東大、京大など旧帝大と早大、慶大の学長は11月24日、都内で会見し、学術と大学の発展のために継続的に公的投資を拡大することなどを訴えた共同声明を発表した。鳩山政権が進める2010年度予算で学術・大学予算が削減されかねないとの懸念から、9大学の学長が一堂に会しての異例の会見となった。(小柳響子)
9大学の学長は東京・千代田区の学士会館で合同会見を開き、「大学の研究力と学術の未来を憂う―国力基盤衰退の轍(てつ)を踏まないために―」と題した共同声明を発表。行政刷新会議の「事業仕分け」で科学技術予算の廃止・削減の判断が相次いだことに対し「学術や大学の在り方に関して、世界の潮流とまさに逆行する結論を拙速に導きつつある」と危機感を表明した。
声明は、米オバマ政権や中国など諸外国が基礎研究に多額の投資を続けていることを指摘し、公的投資の継続的な拡充の必要性を主張。研究者の自由な発想を尊重した投資の強化や、大学の基盤的経費の充実と新たな枠組みづくり、若手研究者への支援、政策決定過程における大学界との「対話」の重視なども求めている。
日本の大学予算は他の先進国に比べて少なく、OECD諸国中で最低水準にある。近年の科学技術研究の状況を深刻に考えた東大、京大などの国立大学の学長が、早大、慶大の学長に呼びかけて懇談の場を設けようとしていた矢先、「事業仕分け」の問題が浮上。9大学の学長は緊急に今回の会見を実施した。
公的投資の削減は私立大学にも大きな影響を及ぼす。今回の事業仕分けでは対象外だが、私立大学は政府から私学助成や大学教育改革に関する競争的資金を受けている。科学研究費補助金など競争的研究や若手支援研究、産学共同研究、地方自治体との共同研究などでは、国立、私立を問わず政府予算による助成が不可欠なのが現状だ。
清家篤塾長は塾生新聞会の取材に対し「政府の事業仕分けは短期的にどんな成果があがっているかを重視しているように見える。科学技術の成果はもっと長期的に評価すべき。民間企業的な費用便益分析だけで科学技術予算を仕分けすることは避けてほしい」とコメントしている。