毎年、多くの新入生を迎えて活気にあふれる日吉キャンパス。その入口にあり大勢の人が利用する日吉メディアセンター(日吉MC)で特に力を注いでいるのが、情報リテラシー教育である。取り組みは多岐にわたり、様々な場面で塾生の学習サポートを行っている。具体的な活動について日吉メディアセンターの和田幸一さんにお話を伺った。
「情報リテラシーという概念は米国で生まれたものであり、日本では、以前から行われていた『図書館ガイド』を受け継ぐ形として発展してきました」と和田さん。日吉MCでも1996年に策定した中・長期ビジョンで情報リテラシープログラム(ILP)への取り組みを組織目標とし、情報リテラシーを浸透すべく、講義形式の授業を拡大した。
しかし、大教室での講義のみでは実践的内容を行なえず、学生は関心を持ちにくい。そこで発案されたのがウェブチュートリアル教材の導入である。
05年に「KITIE」、その翌年には「PATH」が公開され、個人で好きなときに学習することが可能となった。
和田さんは、「塾生だけではなく、外部からの利用者も増加しており需要が高まってきています」とシステムの完成度の高さを窺わせる。
また、それぞれの授業に特化した情報リテラシー教育を実現するために教員との連携も進めている。
教養研究センター設置科目の「アカデミック・スキルズ」は05年から開講された少人数セミナー形式の講座である。この講座では自分で決めたテーマの論文を仲間や教員と議論しながら完成させていく。履修者は大学1年生から大学院生までと幅広い。小崎康弘さん(理工学研究科博士課程2)は「学部・学年に関係なくモチベーションの高い学生が多いので議論が白熱する」と話す。そこでの授業の一部を日吉MCの職員が担当しているのだ。
加えて、教養研究センターの事業として、「アカデミック・スキルズ」既習者の数名(大学院生・学部3・4年生)を学習相談員として日吉MCのレファレンスデスクに配置する新しいサービスを始めた。年齢が近いほうが学生も相談しやすく学習経験の循環も上手くいくそうだ。
このように日吉MCと教養研究センターが相互に協力し合うことによって、塾生の学習サポートをより厚くしているのである。
「これまで活動してきたILPが次の段階に入りつつある」と和田さんは話す。図書館としての枠を超えてメディアセンターの職員が幅広く活動できるようになった1つの要因として「全キャンパスの図書館業務の見直しおよび集中化を含む再構築により、ILP関係業務に人員をシフトできた」ことがあるという。
最後に和田さんは塾生にむけて「慶大では図書館にかなりの予算を割いている。それを無駄にしないで有効に使ってほしい。学習の基本的な問題についてわからないことがあったら私たち職員がフォローしていきます」と話してくれた。
大学では、自ら考え・調べ・論じなければならない。その原点として必要な「資料の集め方」や「論文の書き方」といった学習技術の向上を支援する取り組みが今後も展開されていきそうだ。
(横山太一)