情報通信技術と連動したスマートモブの変化
通信規格の変化や、情報通信端末の性能の向上は、スマートモブの性質を変化させてきた。3G対応の携帯電話でiモードを用いたインターネット接続が可能になったが、メールなど一部の機能に限られていた。スマートフォンは、アプリケーションによって、拡張性を獲得できるようになった。現在、主に使われている4Gの登場により、通信速度が向上し、動画や画像が自由に使えるようになった。「今後は、5Gが普及し、スマートフォン本体の性能が向上することで、現在パソコンでしかできないことがスマートフォンでできるようになるかもしれない」と今後の情報通信技術によるスマートモブの性質の変化に関心を寄せる。
一時期話題になったティックトックも、4Gだからできるようになったことだ。5Gになると、画質が向上し、長い動画がアップロードできるようになると考えられる。「現在、ユーチューブは数時間の動画も載せられるが、当初は数分だったと記憶している。今でいうティックトックみたいなものだった」と、動画を共有するサービスの性質の変化の事例をあげた。ユーチューブやティックトックなどの動画コンテンツ共有サービスが、スマートモブの形成に与える影響にも今後注目だ。
政治的意思表明のためのSNSの使い分け
スマートモブは、さまざまなSNSをうまく使い分けて、政治的意思を表明していると考えられる。「短い文章を拡散したい場合は、ツイッター。長いメッセージを投稿したい場合は、フェイスブック。画像や動画を用いて印象付けたい場合は、インスタグラム。最近では、インスタグラムに文字を含む画像を投稿する場合もある。これは、検索できないので政治的意思表明による逮捕や拘束のリスクは低いが、意味は伝わるという点で効果的だ」と土屋教授は分析する。
SNSの「招待制」への注目
当初、ミクシィなど招待制のSNSが主流だったが、ツイッターやインスタグラムなど電子メールアドレスがあれば、いくらでもアカウントを作ることができるSNSが主流となった。
こうした動きのなかで「実際に人が操作していないアカウントが数千単位で作られるようになり、千単位でアカウントが販売されるようになった。自分の影響力を大きく見せるため、そのアカウントを購入する人たちが出てきたり、偽アカウントを使って、フェイクニュースを流す人が出てきたりした。実際にトランプ運動の中では、ツイッターでトレンドのハッシュタグを使って、フェイクニュースを拡散した」と、土屋教授は招待制でないSNSの問題点を振り返る。
最近では、完全招待制のクラブハウスが話題となった。土屋教授は「足が残りにくいSNSを求める需要はあっただろう。そういう使い方が一部の人によってなされていることは面白い現象」とクラブハウスの広がりについて指摘する。