自由な考えが未来を拓く
55年前。怪獣たちが警鐘を鳴らした人類の諸問題は、今なお解決の糸口を見いだせていないものが数多く残る。飯島さんも特撮の製作現場から一線を退き、「反面教師」であるバルタン星人は15年間、新作品の中でその姿を見せていない。
「なぜ僕が15年間、ウルトラマンに関わらず、バルタン星人を撮らずにいるのかに対する答えは明確です。第一に、製作現場からオファーがないから。注文が無ければ作れない。第二に、僕の理解しているウルトラマンは戦士ではなく、平和の使徒です。他方、現在のウルトラマンは、他の戦士や戦隊と同じなので」と理由を明かしてくれた。
だが、飯島さんの挑戦に終わりはない。「今もバルタン星人の物語を書いているのですよ。出版や映像化出来ていないだけで。その時々の情勢を反映しつつ、常に書き続けています。
僕はこれからもバルタン星人を書き続けていくだろうし、皆さんに届けられるように努力し続けます」
一方、この夏には、小説『ギブミー・チョコレート』の文庫も出版予定だ。書き下ろしでその後の物語も収録され、私たち若い世代に向けたものになるという。
「僕たちも戦後、混迷の中を生きていた。コロナウイルスの流行や、非常に不安定な世界情勢の中で、先行きが見えず不安で迷っている。そんな方々に向け、自分達の経験を書いてあげれば、わずかな指針にはなり得るのではないか。そう思って、非常に意気込んで執筆しています」と飯島さん。
後輩の塾生たちにも思いをはせる。
「徹底して皆さんが物事を考えるようになれば、矛盾だらけの戦争は起きない。自由に声を上げる事が危険視されるようになれば終わりです。戦時中もそう。明治期に必死に洋画を勉強した藤田嗣治らの絵画が戦闘機を描いたものに変わっていきました。そういう時代が来ないことを願います。この道しか進む道はないという風になっていくと、あっという間に『一億火の玉』です。慶應義塾には非常に自由な雰囲気がある。自由な考えを、みなが抱くことで未来は拓かれていく。その先頭に慶應義塾の存在があってほしいと思います」
本記事で触れた作品たちを是非一度ご覧下さい
ウルトラマンシリーズ、怪奇大作戦など、円谷プロ作品を定額見放題で楽しめる”ウルトラサブスク”「TSUBURAYA IMAGINATION」はこちらから。
東京大空襲の夜、炎の中を走り抜けた親友は戻らなかった――
飯島さんの自伝的小説、「ギブミー・チョコレート」の作品情報はこちら。
飯島さんの過去のインタビュー映像はこちらから。沖縄・南風原町出身の天才脚本家、金城哲夫氏のWeb資料館です。
https://www.haebaru-kankou.jp/index.php/kinjo-web-museum.html
ウルトラマン55周年記念サイトはこちら。
(石野光俊)
《『連載ウルトラマンと戦後日本』次回は第2回です》