私たちにできることはあるのか?

どれだけ予報の精度が上がろうと、私たちがその情報を有意義に活用しなければ、無意味になってしまう。警戒や避難を呼びかける情報をしっかりと受け取り、それを活用することが大切であると分かった。

では、こうした情報が発表されたときに備えて、そして気象にかかわる自然災害が発生したときに備えて、私たちが今からすべきことはいったい何だろうか。

 

Q. 防災・減災のために、私たちには何ができるのでしょうか?

A. 皆さんにできることは、大きく分けて2つあります。

まず1つ目は、「災害を知ること」。自分が暮らしている地域、よく行く地域で、どんな災害が想定されているのか。ハザードマップを見たり、過去の災害履歴を調べたりすることで、把握することが大切です。どういった災害が起こり得るのかを知って初めて、どうすればよいのかを考えることができますよね。

2つ目は、「備えを知ること」。以下のようなことを考える必要があります。

  1. 役立つ情報はどのようにすれば入手できるのか
  2. いざというとき、非常用品としてどういったものが必要になるのか
  3. 今いる場所から避難場所まではどのくらいの距離があるか、どういった経路で行けばよいのか

など、対策を立てるために必要となる基本的な知識を確実に知っておくことも大切です。こうしたことをいざというときに慌てて検討しても、それだけ対応は後手後手に回ってしまいます。「災害を知ること」と「備えを知ること」、この両方を普段から抑えておくことで、それぞれに最適な“普段からしておくべき対策”が見えてくると思います。

 

ことば ハザードマップ

地域における自然災害の危険度や被害範囲の予測、避難場所などを記した地図のこと。洪水や土砂災害、地震災害など、様々な自然災害に関するハザードマップがある。なお、各地域のハザードマップについては以下のサイトなどで確認することができるので、自分がいる地域はどんな災害の危険性があるのか、どこに避難するべきかなど、いざというときのために確認しておこう!

わがまちハザードマップ https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/

 

たしかに、いきなり思い立ってすることは大抵うまくいかないものだ。いよいよ災害の危険が迫ったときに「どうしよう」と考えているようでは、もう手遅れだということ。「災害を知ること」「備えを知ること」この2つを日頃から意識して、そこで検討したことをもとに、避難するときの手順を決める、非常用品を確保するなど、具体的な行動をすることが、命を守るために大切になってくるのだ。

 

 

気象にかかわる自然災害に直面したら?

どれだけ予測の精度が上がっても、全てを完璧に予測することはできないのが自然災害の恐ろしいところ。どれだけ意識して対策し、気をつけていたとしても、気象にかかわる自然災害に直面することになってしまうかもしれない…そうしたとき、私たちはどうすれば良いのだろうか。

 

Q. 気象にかかわる自然災害に直面してしまったとき、私たちはどうしたらよいのでしょうか?

A. 最初にも言いましたが、自然災害は多様多種だから、「こういう行動を取れば大丈夫」という単純なものじゃないんです。

ですが、過去の災害事例による教訓も踏まえて、住民の避難行動などに関して、浸水・洪水・土砂災害・高潮に関しては警戒レベルというものが導入されているんです。警戒レベルは住民が取るべき行動と紐づけて決められていて、自分がいまいる地域における警戒レベルがどのようになっているかが、いま取るべき行動の判断基準になります。

大雨をもたらす台風などの現象については、ある程度事前に予測をすることが可能ですから、災害が発生して手遅れになってしまう前に、予測情報を活用して、自ら避難行動をとる際の指標にしてほしいです。

自然災害は本当に多種多様で、防災・減災について単純化するのは至難の業ですが、全ての自然災害に共通する事項を挙げるとするならば、

  1. 自然を甘く見ないこと
  2. 最後は国民一人一人が「自らの命は自らが守る」という意識を持つこと
  3. 結局は一人一人が普段から自然とどれだけ向き合えているか

こうしたことが大切になるでしょうね。

 

ことば 警戒レベル

災害発生の危険度と住民が取るべき行動を5段階で示したもの。避難に関する情報などを提示する際に使用されている。大雨や洪水に関しての警戒レベルの詳細は下図の通り。

メディアの気象情報などでしばしば見られる「大雨注意報」は警戒レベル2、「大雨警報」は警戒レベル3、そして「大雨特別警報」は警戒レベル5であることが分かる。 なお、警戒レベル5は既に災害が発生している可能性が非常に高い状態のため、警戒レベルが3や4の時点で避難行動をとることが強く呼びかけられている。

【引用元】気象庁HP 防災気象情報と警戒レベルとの対応について

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html

 

どれだけ気象予報の精度が上がり、災害の危険が迫ったときに取るべき行動も示されていても、1人1人が防災・減災の意識を持たなければ、被害を避けることはできない

いつ襲ってくるか分からない気象にかかわる自然災害。自覚してほしいのは、当たり前ではあるが「自分の命を守るのは自分自身」であるということ。誰かに任せたり、頼ったりするのではなく、いざというときのことを、いざというときのために、自ら考えることが大切なのだ

 

なお、気象庁では、以下のサイトで“大雨が発生した際にどう避難すればよいか”について、オンライン資料を提供している。新型コロナを心配することなく、自宅で防災・減災について勉強できるツールだ。この機会にぜひ活用してみよう!

気象庁 eラーニング「自らの命は自らが守る~大雨の時にどう逃げる~」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jma-el/dounigeru.html

 

また、2018年7月に岡山県・広島県・愛媛県で多くの被害を出した大雨(平成30年7月豪雨、西日本豪雨とも)の教訓を踏まえて、避難のあり方について、以下のような報告書がまとめられ公開されている。特に33ページの〈国民の皆様へ〉という部分では、私たちの“避難に対する意識”と“命を守ること”について考えさせてくれる言葉が並んでいる。この機会に確認しておこう!

『平成 30 年 7 月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方について(報 告 )』 http://www.bousai.go.jp/fusuigai/suigai_dosyaworking/pdf/honbun.pdf

 

 

次回の『塾生ならば知っていたい!』もお楽しみに。

(小山田佑平)