連載|14人がオモウコト。
テーマ「夏休み」

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「戦争」を経験する

 

「先の戦争を忘れない」「平和は大事だ」。毎年8月になると、どこか聞きなれた言葉が飛び交う。天皇陛下のおことば。首相の式辞。新聞の見出し。戦争を直接知らない私たちは、このような言葉を通して、75年前に戦争があったことを意識させられる。

 

もちろん、戦争の記憶を風化させないためには、毎年8月に戦争や平和について少しでも意識することは大切だ。しかし、毎年同じような言葉に接する私たちは、真剣に戦争と向き合っていると言えるのか。

 

私たちの戦争への向き合い方がマンネリ化する一方で、戦争を美化するような言説が確実に勢いを増している。歴史修正主義に基づく「新しい戦争観」を本気で信じる人も増えた気がする。

 

2017年の終戦記念日、当時高校1年生だった私は「新しい戦争観」を信じる人が多く集まる靖国神社を訪れた。終戦記念日の中心地を自分の目で見たかった。そこに待っていたのは、「新しい戦争観」ではなく、「戦争の新しい経験」だった。

 

今でも鮮明に覚えている。さまざまな思想を持つ人たちから配られるビラ。軍歌「月月火水木金金」(土日返上で働く軍人を賛美する)を高らかに歌う人たち。軍服姿の男性と記念撮影をする外国人。境内で集会を開く日本会議。神社の周りを走る右翼の街宣車。

 

テレビの画面や新聞の見出しには現れない「戦争」がそこにはあった。彼らの思想がどうだなど考える余裕はなかった。見るものすべてが新鮮だった。

 

どこか遠いもので、儀礼的に感じてしまう「戦争」。靖国神社に訪れたことで、私は「戦争」を経験した気がする。

 

機会があれば、終戦記念日に、韓国や台湾を訪れてみたい。彼らはどのように「戦争」を経験しているのか知りたい。

 

☆ペンネーム わらび餅アイス

☆学部学科学年 法学部政治学科1年

☆ひとこと チーバくんの喉に住んでいます。