8月6日、三田キャンパス北館ホールで「電動フラットバスの地域先導的普及モデル策定と、システム化の実証研究」の本格的始動に向けたキックオフイベントが開かれた。このプロジェクトは、環境に配慮した電動バスの普及を目的に、環境省、慶大、いすゞ自動車株式会社、神奈川県などが連携して行っていく方針。2012年までの実用化を計画している。 (入澤綾子)
本プロジェクトは、乗用車の電気化は世界中で進められているが、経営上の理由からバスはほとんどない背景を踏まえ、環境省平成21年度産学官連携環境先端技術普及モデル策定事業として採択。バスの車輌開発と実証試験、普及モデル検討を、環境省、義塾のほか、メーカーやバス会社などを含めた強固な協力体制で実施していく。
具体的には、「学」として、今まで蓄積してきた技術を義塾が導入。「官」として、経済産業省EV・pHVタウン構想の中で広域実施自治体として選定された神奈川県と国立環境研究所が、台上・路上試験のための評価技術を提供する。また「産」として、バスとしての総合化を行ういすゞ自動車、充電インフラを行う東京電力をはじめ、東芝、日本軽金属、ブリヂストン、東京R&D、神奈川県バス協会12社が連携体制を組んでいる。
開発予定の電動バスは従来のバスと比較すると、二酸化炭素(CO2)排出量を10分の1に抑えることができる。これにより、温暖化、地域環境、エネルギー問題解決のきっかけになることが期待される。
環境への配慮だけでなく、床の低床化・フルフラット化、乗車空間の拡大など、乗客・乗員にかかる負担を少なくした設計が検討されている。
キックオフイベントには、環境省総合環境政策局長の白石順一氏、清家篤塾長、いすゞ自動車株式会社代表取締役副社長の只木可弘氏、神奈川県知事の松沢成文氏が出席し、環境情報学部の清水浩教授の司会で進行した。
白石氏は「これは低炭素社会実現への先端技術である」と話し、積極的な予算の提供を行う姿勢を見せたほか、清家塾長が「産官学提携の良い例にするために、身をもって実学を体現していく」とし、長期的な目で見たときの前例づくりとしても、意欲的であることをうかがわせた。
現在、基本的な技術的問題は解決しており、基礎研究から実証研究への段階であるという。
1年後には車両が完成し、来年の末には車検を取得する見通し。試作車1台につき5億円の見積もりがなされているが、2012年には少量生産から大量生産へと切り替えることで、価格の低下を図る中量生産以上で競争力を持つことが可能となる。全国的な普及へと展開していくという。