カタリバオンラインとは
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、3月2日から一部の小中高と特別支援学校で始まった臨時休校措置。学校という子どもにとっての「居場所」が閉ざされたことを受け、認定NPO法人カタリバは、3月4日からオンラインの子どもたちの居場所を作っている。テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を活用した「カタリバオンライン」という無料サービスで、学校再開までは、平日午前9時半〜午後4時半、土日午前9時半〜午後1時までオープンしている。カタリバオンラインの立ち上げに関わった、慶大総合政策学部卒の阿部愛里さんに話を聞いた。
阿部さんは、プログラムの時間割などを決めたり、保護者からの意見を参考にしたプログラムづくりをしたりする役割を担っている。
朝夕のサークルタイムで生活リズムを整える
カタリバオンラインの特徴は、朝夕のサークルタイム。子どもたちはキャストと呼ばれるスタッフに、朝のサークルタイムでその日の過ごし方を話し、夕方に振り返りをする。カタリバオンラインで行われる40分程度のさまざまなプログラムに参加したり、宿題に取り組んだりするなど、1日の過ごし方は十人十色だ。
「カタリバオンラインの強みは、生活リズムを整えることに特化している点。数百人の保護者からの相談会を開催した際、生活リズムの乱れやゲームやネットの依存症になることを懸念している方が多かった。だから、サークルタイムをメインにしている」と阿部さんは語る。
様々な子どもたちの「居場所」に
どこからでもアクセスできるカタリバオンラインは、さまざまな子どもたちの「居場所」となっている。不登校の子どもや、海外に住む子ども、持病がある子どもなど、実際に学校に来ることが難しい子どもたちも、カタリバオンラインに集っている。
地方に住み、地理的教育格差に対して問題意識を抱える人たちからも大きな反響があったそうだ。「友達と切磋琢磨することで、中高一貫校や私立中入学のための受験勉強のモチベーションは保つことができるが、周りに受験勉強をする友達が少ない地域に住んでいる人もいる。カタリバオンラインで、中学受験に取り組む子どもたち同士がつながり、一緒に頑張ろうと言い合える関係を築いている」と阿部さんは話す。
カタリバオンラインでは、双方向のコミュニケーションを大切にしている。だからこそ、独りで留守番をしたことがない子どもも「カタリバオンラインがあるから大丈夫だよ」と保護者に言うことができたり、保護者もスマートフォンやパソコンを安心して預けられたりするのだろう。
「最初は、実際に会ったことがない人と話せるのかという不安があると思う。毎日顔を合わせるうちに、『友達』になっていく。子どもたち自身がやりたいことを企画してやってもらうようにしている。自分の得意なことを披露したり、Zoomの各ルームで行われる友達の企画の参加人数を増やすために、他のルームにいる人に参加を呼び掛けたりするなど、子どもたちが自発的に行動している。このようなエピソードから、カタリバオンラインが子どもたちの『居場所』になっていることを強く感じる」。阿部さんはカタリバオンラインに参加する子どもたちについてこのように語る。
学校という居場所が閉ざされた子どもたちは、カタリバオンラインという新たな居場所で、新たな友達と出会っている。その陰には、「子どもたちにとって、安心安全なオンライン上の居場所を作りたい」という阿部さんをはじめとするカタリバのスタッフの思いが詰まっていた。
(塚原千智)
カタリバオンラインに参加する子供たちが、カタリバオンラインのテーマソングを作成した。
聞いてみてはいかがだろうか。