昨年慶大へ入学した前田旺志郎さん(総1)に、大学生活や新入生に向けたアドバイスなどについてインタビューした。

※学部学年は取材当時のものです。

これまでの芸能活動について

3歳で松竹芸能に入り、まず子役として芸能界での活動を始めました。その後、兄の航基と「まえだまえだ」を結成し、漫才を始めたのが、小学1年生の時でした。漫才をやりながら、役者の仕事もする日々でした。

しかし、小学校高学年のタイミングで「まえだまえだ」の活動を休憩し、以降は兄弟2人とも仕事を役者としての活動に絞るようになりました。

 

慶大へ入学した理由

「今までの芸能活動とは違う何かを学びたい」と考えていたところ、SFCを紹介してもらいました。

SFCについて調べる中で、皆さんそれぞれいろんなことをやっていて、個性の強い人たちがたくさんいるイメージを持ちました。今までの学校生活では、芸能活動をしている人があまりいなかったので、周囲から浮いてしまう場面もありましたが、この大学であれば、それも「ただの一つの個性」になると感じました。

「さまざまな目標に向かって努力する人たちと一緒に学ぶことで、自分のやりたいことが新たに見つかるかもしれない」。そんな興味が湧き、SFCに入ろうと思いました。

また、演劇教育をやりたかったので、SFCの鈴木寛研究会でコミュニケーションや会話、熟議などを学びたいという思いがありました。

 

受験を通して得たこと

受験の形式はAO入試でした。芸能活動をやっていたので「大丈夫だろう」と思っていたら、Ⅰ期で落ちてしまいました。この時、自分が能動的に何かをやっていたわけではないことに気づきました。

Ⅱ期へ向けて、本を読んだり、NPO法人を訪れて話を聞いたりなど、演劇・教育の分野に今まで以上に突っ込んで、いろいろやり始めました。自ら話を聞きに行ったり、調べたりしている時は、すごく楽しかったし、常にワクワクしていました。「自分が好きだと思える学びをすることの楽しさ」を知りましたね。




1年間の学びを振り返って

とにかく自分の興味のある授業を選んで受けていました。演劇をしていて、コミュニケーションを取ることが好きなので、基本的にはグループワークやコミュニケーションがメインとなる授業を多く取りました。

SFCの授業の中でもいろんな人と出会い、話すたびに「皆すごいな」「自分ももっと頑張ろう」と純粋に思えるほど、自分とは全然違う考え方の人がたくさんいて、刺激的な日々でした。

突出したキャラクターの人に対しても、排除しようとする雰囲気がなくて、「何でもいいんだよ。自分のまま、ありのまま、それが個性なんだよ」と、皆を認めていく空間が教室でもでき上がっていることもすてきだなと思います。

教授も個性が強くて、生き生きと授業をされていますね。本当に自分の好きなことをしているんだなと感じます。そのおかげで聞いている側もより意欲的になれます。

 

学業と芸能活動の両立について

おそらくできているんじゃないかな、という感じです(笑)。大学で皆と授業を受けているのも楽しいし、外部で芸能活動をしているのも楽しいし、とてもバランスよくできていると思います。お互いが息抜きになっていますね。

大学での学びは家族も興味を持ってくれています。今までは、子どもと親として会話をすることがほとんどでしたが、大学で学んだことに関しては対等な立場で話ができて楽しいです。

 

今後、学業で挑戦したいこと

演劇教育のワークショップに少しずつ参加できるようになってきたので、次のステップとして2年生のうちに自分で数回のワークショップを開催したいです。失敗を恐れずに、やりたいことを行動に移せていけたらと思っています。

 

新入生へのメッセージ

受験期を通して、受け身だと、まったく前に進まないと知りました。自分がやりたいと少しでも思ったら、まあいいかと思わず、やりたいと思ったその時に、自分の足を動かしてみてください。 

学生のうちにしかできないその行動力で、「学びを得る」という体験をやってくれたらいいな、と思います。最初は勇気が必要ですが、それも次第に慣れていくので大丈夫です。

自分が行動していく中から、何かが見つかることが多いです。「どんどん行動していってほしい」。そう思いますね。

 

【プロフィール】

前田旺志郎(まえだ・おうしろう) 

2000年12月7日生まれ、大阪府出身。兄の前田航基とお笑いコンビ「まえだまえだ」として幼少期より活動。11年には映画『奇跡』(是枝裕和監督)で主演を務め、俳優として活躍の場を広げている。近年の主な出演作は、映画『海街diary』『超・少年探偵団NEO Beginning』、ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』『ラジエーションハウス』『シロでもクロでもない世界で、それでもパンダは笑わない。』、舞台『最貧前線』(世田谷パブリックシアターほか)『NIPPON・CHA!CHA!CHA!』(主演/神奈川芸術劇場)など。

 

(聞き手 桐原龍哉)