第5世代移動通信システム(以下、5G)の普及により、外出時の通信が、より便利になることが予想される。
日吉キャンパスの通信環境はどうなるのか。日吉ITC(インフォメーション・テクノロジー・センター)を取材した。
現在のWi-Fi環境
日吉キャンパスには、keiomobile2とeduroamという2種類のWi-Fiがある。
同じアンテナを利用しているが、それぞれ異なる特徴がある。
前者は慶大に特化した回線で、塾生向けのサービスも利用できる。
後者は、加盟している世界中の大学や空港などで、慶大の認証を使って利用できるWi-Fiだ。
日吉ITC所長の小林宏充さんは、
「eduroamに加盟したことで、世界中で簡単に接続できるようになった。他大学に行った時、自校のキャンパスと同様にWi-Fiが使える。
また、海外の人が慶大に来た時も、海外の認証で、慶大のWi-Fiを利用できる」
と話す。
日吉キャンパス内には、約650台のアクセスポイント(以下、AP)が設置されている。
APとは、有線を無線に変換する機能を持つ、無線LANに特化した機械だ。大教室には3、4台が設置されている。
日吉キャンパスでは、1台のAPにつき、約200台の端末が繋がっていても、システムトラブルを起こしたことはない。
授業と研究のために提供されるWi-Fiは全ての教室で利用できる。
中庭などの屋外は、屋外用の電波帯域を使う必要があるため、現在はAPが設置されていない。
Wi-Fiは生活に必要なものになりつつあるため、どこまで日吉ITCとしてWi-Fiを提供するのかが今後の課題だ。
5GとWi-Fiの共通点
5Gの導入に合わせて、次世代Wi-Fi規格であるWi-Fi6の実用化が進んでいる。日吉キャンパスでも導入される予定だ。
現在の規格のWi-Fi5からの格上げにより5Gと同等の通信速度でWi-Fiを利用できるようになる。
電波が届く範囲が狭いことが共通の課題。その分、たくさん基地局を置く必要がある。
向上する通信速度に対応できる性能の設備が必要な点も、共通している。
5GもWi-Fi6も、次世代規格に対応していない設備があれば、高速の通信ができない原因となる。
機器があっても、その接続先の有線が対応していなければ、通信速度が向上しないことが懸念される。
Wi-Fi環境をさらに快適に
Wi-Fi6へ格上げするため、今夏、APを繋いだケーブルを複数差し込むスイッチを、1ギガビット毎秒を超える速度に対応できるものに変更した。
AP、ケーブル、スイッチといった物理層を整えることが、Wi-Fi6の性能を発揮するためには不可欠だ。
すでに生活圏内の建物に埋め込まれた古い規格のケーブルの引き換えは難しいが、今後進めていく。
小林所長は
「屋内のWi-Fiと屋外の5Gがシームレスに繋がり、違和感がないようにする。
それが、日吉ITCがキャンパス内でWi-Fiを整備する上で、一つのポイントとなる」
と語る。
これが、日吉ITCの使命だ。
(塚原千智)