現代文で得られたものが大学でどう生かされるのか
「現代文で他人が自分の考えをどう工夫して述べているかを学んだことによって、大学ではどのように自分の考えを人に伝えていけばよいのかを学ぶことができる」と語る霜先生。言葉を受信する側から発信する側へ徐々に移行していくのが大学生活だという。
「読むことと書くことはキャッチボールのようなもの。読むことを通じて、自分がボールをたくさん受けてみると、ボールをどこにどのくらいのスピードで投げると取りやすいかもわかってくる。大学生活を通じて自分が何を発信したいのか、どのように投げるといいかわかっていってほしい」
大学でやってほしいこと
多くの受験生は決められた勉強をやってきたでしょうが、大学では思い切り迷いながら行動してほしいと霜先生は語る。
今まで視野の中に入らなかった世界で試行錯誤しながら挑戦していく過程では、どうしても路頭に迷う時がある。しかしその中で「自分は何を選べば良いのだろうか」と迷ってほしいのだという。
「周りを気にせず挑戦できるのが大学生活であり、大学に行く大きな意味の一つだろうと思う。自分がメリットを得られるかどうかは関係なしに、また、勉強か遊びかと領域を区別せず、自分の好奇心のまま思う存分行動してほしい」
こういったことは今まで存在すら知らなかった学問や世界と接する機会が増える大学でしかできないことだろう。
受験生への激励メッセージ
「『今まで力を蓄えてきたわけだから、それを発揮できる楽しい日だ』と思いながら、一回きりの入試に緊張している自分に自信をもって受験してきてほしい。どこかで少し楽しみながら、どこかで自分を誇りに思いながら試験会場に行ってもらえたらと思います。やらなければいけないなら全力で楽しんだ方がいいに決まっています」と霜先生は笑顔で語る。
またどこの大学を受験するにしても「ここに通うのだな」という気持ちで会場に向かうのがよいという。
「今まで受験勉強でサナギのように力をためてきたが、入試は蝶の羽化のように『自分からいま羽が生えるのだ』という気持ちで行ってほしい。私もまた羽化したいと思ってますよ(笑)」
たった一度きりの人生において、大学名が重要なわけではない。羽化を経て大空を舞うその後が本番だろう。
(水口侑)
【プロフィール】
霜栄(しも さかえ)
駿台予備学校講師。東大入試問題研究会担当。東京・津田沼・横浜を中心に札幌・仙台・大阪・福岡校などに出没。衛星全国サテネット・オンデマンド講座に出演中。方針は基本を深く,難問を楽しく。ぼくの話に笑ってくれる人の心づかいに超感謝。小説を書き,花を生ける。著書は『生と自己とスタイルと』(曜曜社)『現代文読解力の開発講座〈新装版〉』『生きる漢字・語彙力〈三訂版〉』『漢字・語彙力ドリル』『生きる現代文キーワード〈増補改訂版〉』『共通テスト対応 生きる現代文 随筆・小説語句』(駿台文庫)『大学デビューのための哲学』(共著/星雲社)ほか僅か。