第24回慶應医学賞授賞式および受賞記念講演が先月19日、慶大信濃町キャンパス北里講堂で行われた。
今年度受賞したのは、岸本忠三(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授)博士とハンス・C・クレバース(ユトレヒト大学医療センター分子遺伝学教授)博士の2名である。今回の受賞は、岸本博士による「IL-6の発見から医学への応用」と、クレバース博士による「Wntシグナルによる幹細胞と臓器形成制御」の研究の功績をたたえたものだ。
岸本博士は、世界に先駆けてIL-6を発見しその遺伝子をクローニング、そしてIL-6のシグナル伝達機構の全容を解明した。受賞式では「80歳になっても慶應医学賞という名誉ある賞を頂けたことは光栄。これを励みにして研究を続けたい」と語った。
クレバース博士は、発生・分化、幹細胞の維持、発がんなど生物学的に極めて重要なシグナルであるWntシグナルの研究を行っている。Wntシグナルが幹細胞及び臓器形成制御に関わることを提唱し、生体内で幹細胞を追跡することに成功。幹細胞の機能や性質を次々に明らかにした。
慶應医学賞は「世界の医学・生命科学の領域において医学を中心とした諸科学の発展に寄与する顕著、かつ創造的な研 究業績をあげた研究者を顕彰することにより、世界の医学・生命科学の発展に寄与し、ひいては人類の幸 福に貢献すること」を目的としている。1996年に設立し、過去には本賞受賞者からノーベル賞受賞者を8名輩出している。
世界各国の著名な研究者および研究機関から推薦された候補者の中から、厳正な審査を重ね、最終審査委員会で学内外13名の審査員が受賞者を決定する。
授賞式に来席した長谷山彰塾長は「慶應医学賞を通じて、医学・生命科学の発展、そして人類の幸福が続くことを願う」と祝辞を述べた。
(浅川力哉)