2015年より慶大野球部の指揮を執っていた大久保秀昭監督が今季をもって退任した。慶大野球部を19年ぶりの日本一に導き、多くの選手が「父のような存在」として慕う彼にインタビューした。
今シーズンを振り返って
日本一を手にした今シーズン。大久保監督は振り返って「最高の1年だった」と語る。
前年のリーグ三連覇を逃した悔しさを経験した選手たちが、卒業した先輩たちの思いを胸に戦った。春に明大に敗れ、あと一歩で優勝を逃した経験が、監督自身の「このチームを勝たせたい」「郡司(環4)を日本一のキャプテンにしたい」という思いを強くさせた。
しかしシーズンを通して全てが順調だったわけではない。カナダ遠征やオール早慶戦等のイベントが続き、チームがまとまらない時期もあった。それでも心配はあまりしていなかったという。「開幕が遅かったのもあり、これからチームを作っていくつもりだった。実際、自分の思い通り徐々にチームの調子は上がっていった」と話す。
チーム好調のきっかけとなった選手に、森田(商2)の名前を挙げた。先発の二番手を誰にするかということが課題であり、森田が夏からコンディションを維持していたのが大きかったそうだ。
リーグ優勝、そして日本一を果たせたのは選手の力だけではない。学生コーチやスタッフの活躍も欠かせないものであった。監督自身の「日本一になりたい」という思いから、きつい言葉をかけたこともあったそうだ。しかし、監督の思いをくみ取って皆が理解してくれた。特に今年のチームは、それぞれが役割を全うし、全員の力でつかんだ日本一であった。
監督生活の中で印象に残っている選手
慶大野球部での4年間にわたる監督生活で一番印象に残っている選手に、去年卒業した長谷川晴哉を挙げた。抜群の技術があるわけではないが、一生懸命練習に取り組み、少しずつ自分でチャンスをつかんでいき、最後はリーグ戦でサヨナラヒットを打った。「レギュラーメンバー以外でも、真摯に練習に向き合う選手がどんどん上手くなっていくことが何よりも嬉しく、指導者冥利に尽きる」とし、彼の考える野球の魅力の一つがここにあると語る。
「大久保野球」とは
長年野球と共に生き、誰よりも野球を愛する大久保監督。「大久保野球」ともいわれる自分自身の野球を「大人な野球であり、かつ隙のない野球」であると話す。「大人というのは、指示を待つことなく選手自らが状況を判断する。そして、最後の1秒まで絶対に諦めない野球」と語った。
監督生活を振り返って
4年間の慶大での監督生活を「充実していて、楽しい時間だった」と話す。「心の底から嬉しかったり、悔しかったり、感動したり、様々なドラマがグラウンドで起きた。そして、勝った時にたくさんの人が喜んでくれて、『ありがとう』と言葉をもらえる時に一番達成感を感じた」と振り返った。
(山本結以)