就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが学生の「内定辞退予測スコア(=キーワード解説)」を算出していた問題で、同社が外部サイト「楽天みんなの就職活動日記(みん就)」利用者の閲覧履歴を取得し、「ビジネス検証」を行うという名目でスコア算出に使用していたことが分かった。リクルートキャリアが社外の就職関連サイトからも網羅的に学生のデータを収集し、内定辞退予測の精度を高めていた実態が明らかになった。

 

「楽天みんなの就職活動日記」のサイト画面




2017年に検証使用

本紙が入手したリクルートキャリアの内部資料によると、同社は2017年8月時点で楽天みん就から利用者の閲覧履歴を取得。契約企業から提供を受けた採用選考応募者の情報や、リクナビの会員情報などと照合し、内定辞退予測の精度を検証していた。

リクルートキャリアは取材に対し「楽天とは、個人を特定できない方法によりビジネス検証を行うことで合意していた」と説明。その上で「楽天みん就から閲覧履歴を取得し、(内定辞退予測)スコア算出のために使用した」と明らかにした。また、検証で算出したスコアは契約企業には販売しておらず、楽天みん就から提供を受けたデータは廃棄済みとした。

楽天みん就は1996年に運営を開始した就職口コミ情報サイトで、学生が匿名で意見交換できる掲示板が主な特徴。掲示板や選考体験談などの閲覧には会員登録が必要となり、約64万人の学生が登録している。

歯切れ悪く

2018年3月に開始したサービス「リクナビDMPフォロー」(19年8月に廃止)でリクルートキャリアは、契約企業から取得した採用選考応募者の「クッキー(=キーワード解説)」とリクナビの会員情報を照合し、独自の計算式で割り出したスコアを企業に販売していた。その過程で、提携サイト「外資就活ドットコム」からも利用者の閲覧履歴を取得し、スコア算出に利用したことが明らかになっている。

リクナビの提携サイトに楽天みん就は含まれていない。では、リクナビDMPフォローのサービス開始後は、楽天みん就のデータ提供は行われていなかったのか。

取材に対し、楽天はリクルートキャリアとのビジネス検証についての合意を認めたが、18年3月以降も同社に利用者閲覧履歴を提供していたかどうかに関しては「契約の詳細について回答は控える」とコメント。リクルートキャリアも「取引先との契約に関わる」として明言を避けた。

アンケートで追跡

個人情報保護委員会は12月4日、リクナビDMPフォローのサービス提供にあたってリクルートキャリアが学生から適切な同意を得ていなかったとして、是正を求める2度目の勧告を出した。また、保護委は同社に内定辞退予測を依頼した契約企業37社にも行政指導を行ったと発表。合否への影響にかかわらず、内定辞退予測という学生の不利益になり得るデータを収集する目的を通知しなかったことが、個人情報保護法の趣旨に反すると判断した。

同日にはリクルートキャリアの社内調査の経過も公表された。それによると、同社はリクナビDMPフォローの契約企業に対し、事前に応募者を対象としたウェブアンケートを実施するよう依頼。学生がアンケートサイトにアクセスすると、目印となるクッキーが学生のブラウザー(閲覧ソフト)に送信され、追跡が可能となる仕組みだった。

「アンケート方式」はサービスの仕様が変更される19年3月まで続いたが、その間、学生はアンケートの目的を知らされていなかった。




18卒も対象に

今回の取材で、リクルートキャリアは18年3月より前に、内定辞退予測の検証を目的に契約企業から▽応募者のID▽クッキー▽選考辞退・承諾情報——をアンケート方式で受け取っていたことも明かした。その際、データ取得の対象となっていたのは18年卒業の学生だ。同社はビジネス検証の期間中、契約企業37社以外から応募者情報を提供された事実はないとしたものの、実際に提供を受けた具体的な企業名は伏せた。

18卒の学生を対象に行ったスコア算出の検証で内定辞退予測に一定の精度が認められたことで、リクルートキャリアは18年3月の正式なサービス提供に踏み切ったとみられる。