都市大生に施設開放

台風19号により東京都市大学世田谷キャンパス図書館の地下書庫と電気室が水没し、甚大な被害に見舞われた。これを受け、慶大理工学メディアセンターは緊急支援として都市大生の利用受け入れをツイッター上で発表。その経緯と図書館の台風対策について同センター主任の五十嵐由美子さんに話を聞いた。

 

実施の背景

同センター元事務長はSNSで都市大の状況を知り、当時の事務長に「同じ理系大学の図書館としてできることはないか」と働きかけたという。慶大の全メディアセンターでは東日本大震災の被災地域の学生を受け入れた前例があり、都市大の被災状況を見て、その記憶が蘇ったそうだ。通常、他大学の学生が利用するには紹介状が必要だが、学生証を提示すれば利用できることを先方に伝え、受け入れ決定の告知には学生に幅広く伝わるツイッターを使ったという。

取材時までの都市大生利用者数は29人、受け入れの期限は、図書館の復旧が見込まれるまでとしている。利用は閲覧室の使用が主で、特に混乱も生じていないそうだ。

都市大は、大学図書館の相互協力協定である世田谷六大学コンソーシアム私工大懇話会(首都圏私立工科大学ネットワーク)に加盟しており、それらの図書館も都市大生を支援したが、それ以外で受け入れを発表したのは慶大理工学メディアセンターだけだった。




図書館と水害

日頃から飲み物をこぼしたなどで濡れた本の修復は可能な限り行われているものの、基本的に本は水に弱い。そんな本を守る図書館はどのような台風対策を行っているのだろうか。

慶大理工学メディアセンターでは、今回の台風が来る以前から施設内で雨漏りの可能性がないかを点検し、見つけ次第修復したという。「地下書庫があるわけではないため、雨による水没被害はあまり心配していなかった」「高台に建っているので今まで浸水被害の記録もなかった」と五十嵐さんは振り返る。

しかしながら、昨今の異常気象および都市大の被災状況を受けて、想定外のことが起こったときのために、さらに対策を講じる必要が出てきた。前例はないものの、外路に雨水があふれ出した場合に備え、ドアに置くための簡易土嚢を用意することを検討しているという。

先人たちの知恵と努力の遺産である図書館の蔵書を災害からいかにして守り共有していくか。今回の台風をきっかけに人に対する防災だけでなく本に対する防災も考え直される時がきたのかもしれない。

 

(田上 広乃)