「ヘルプマーク」を知っているだろうか。援助や配慮を必要としていることが、外見からは分からない人が使用するマークで、現在全国に普及しつつある。
ヘルプマークを考案した経緯やマークを見かけたときの対応、さらなる普及のために行っていることについて、東京都福祉保健局・障害者施策推進部・共生社会推進担当課長の島倉晋弥さんに話を聞いた。
見えない障害でも、安心して生活するために
ヘルプマークを作成したきっかけは、都議会での「様々な見えない障害のある人が安心して生活できるように、都として統一したマークを作成してはどうか」という提案だったという。
この提案をしたのは山加朱美・元東京都議会議員で、人工股関節を付けて生活しており、障害が外見から分からないことにより不便を感じていたという。一人の提案から作成されたヘルプマークは、令和元年10月31日現在、1都1道2府37県で利用されている。
ヘルプマークといえば「+」と「♡」のデザインが特徴的だ。これには、援助や助けが必要だという意味があるという。また、マークの赤色は「普通の状態ではない」ことを意味し、形や大きさは周囲の人に気づいてもらいやすいものにしたという。
ヘルプマークを身につけた人を見かけた場合、どうしたらよいのだろうか。「思いやりを持って接してほしい」と島倉さんは話す。具体的には、電車やバスの優先席を譲る、困っている様子であれば声をかける、災害時に支援をするといったことが挙げられる。
ヘルプマークが必要となった場合、都内では多くの場所で受け取ることができる。都営地下鉄をはじめとする駅の駅務室や都立病院などで配布しており、移動が困難な人はヘルプマークを自宅に郵送してもらうこともできる。ヘルプマークの利用条件はなく、ヘルプマークを必要とする人がマークを手に入れやすい環境が整えられている。
ただし、東京都以外では、配布時に障害者手帳の確認や申請書の記入が求められることもある。都以外の自治体に住んでいる人は、それぞれの自治体に問い合わせてほしいと島倉さんは話す。
思いやりのある行動を
ヘルプマークのさらなる普及に向け、現在も多くの活動が行われている。ヘルプマークの趣旨に賛同する企業や、学校によるイベント、啓発物の作成などの取組も行われている。東京オリンピック・パラリンピックが来年実施されることを受けて、日英共通のポスターも作られたそうだ。ヘルプマークを外国人に広く知ってもらうことを目的とし、電車内や駅構内にポスターを掲示している。
最後に、ヘルプマークが普及していく中で私たちが気を付けるべきことについて聞いた。「一番大切なのは、ヘルプマークを身につけた方の周りの人がどう行動するか。社会の中には、外見からは分からなくても困っている人がいることを知ってほしい」と島倉さん。今一度、自分たちの行動を見直してみてはどうだろうか。
(原田実希)