多くの塾生が行き交う日吉駅前の横断歩道。そのそばで、色とりどりの花が美しく咲き誇っている。10年もの長きに渡り、この美しい景色を守ってきたのは、地域のボランティアの方々だ。日吉駅前の花壇を管理する「日吉駅前花壇 花ポケット」の活動を取材した。
「日吉の街をきれいに!」――まっすぐなスローガンを掲げ、日吉駅前の美化に取り組む。現在は、日吉在住の14名を中心に、花の植え付け・水やり、花壇周辺の清掃などを行っている。これからの暑い時期には、毎日の水やりが欠かせないという。
「花ポケット」の歴史は、約10年前にさかのぼる。2009年11月、横浜市が日吉駅前に花壇とベンチを設置。花壇の維持・整備を巡り、以前から日吉地区センターで花壇の手入れを行っていた小出瑛子さん(現・代表)たちに白羽の矢が立った。
10年間の活動の中で、辛いこともあった。小出さんは「新しい花壇に変わる前が、本当にしんどかった」と振り返る。日吉駅前の花壇が現在の姿となったのは、2017年2月のこと。それ以前は、花壇に加えベンチも設置されていたため、ゴミのポイ捨てが相次いでいた。特に2010年のサッカーワールドカップの際には、花壇の周辺がゴミや吐しゃ物で溢れかえり、非常に辛い思いをしたという。
最近では、活動に参加する塾生の姿も見られるようになった。熊谷明奈さん(総3)は、6月に行われた花の植え付け作業に参加した。女子ソッカー部に所属する熊谷さんは、練習で頻繁に訪れる日吉についてもっと知りたいとの思いから、参加を決めた。「きれいな日吉駅があるのは当たり前のことではないと実感した。次は友人と一緒に参加したい」と活動を振り返る。
「花ポケット」からは塾生の参加を歓迎する声が聞かれた。総務の内田秋子さんは、「学生さんが参加してくださり、非常に嬉しかった。花の植え付け作業は年に数回のことだから、ぜひまた来てほしい。若い力が必要だ」と訴える。
数々の受賞が励みになり、活動を続けることができた。2013年には「横浜市花と緑の見どころ」に認定され、2016年には国土交通大臣賞も受賞した。街の人々の言葉も、活動の原動力だ。小出さんは、「やはり『いつもありがとう』の声が、一番嬉しい」と笑顔で語る。
今年の11月で活動開始から10年の節目を迎える「花ポケット」。今後について小出さんは「まずは来年、良い花壇を作りたい」と意気込む。来年夏の東京オリンピック・パラリンピックで英国代表チームが日吉で事前キャンプを行うのに合わせ、日吉駅前の花壇もイングリッシュガーデン風にする予定だ。「美しい花壇で、イギリスの皆さんをお迎えしたい」
日吉の玄関口を彩る、幅20メートルもの大きな花壇。そこには、困難の中でも強い責任感を持って活動に取り組むボランティアの姿があった。来年の夏、英国代表チームもびっくりの美しい日吉の街を見るのが楽しみだ。
(太田直希)