9月12日 慶大9-4立大 ○
9月13日 慶大1-3立大 ●
9月14日 慶大2-3x立大(延長10回) ●
相場監督就任以来最悪の4位と低迷した春季リーグ戦から早3ヶ月。比較的涼しかった夏が明け、慶應義塾高校を45年ぶりに甲子園に導いた中林伸陽、漆畑哲也らが中心となる4年生にとっては最後のリーグ戦が始まった。開幕日は人気の早大、明大の試合がなく、雨が降ったために入場者数も4000人だったが(春季開幕戦の早大―東大は13000人)、慶大も春5位の立大に対して10季振りに勝ち点を献上するという寂しいスタートとなってしまった。
第1戦開始直後、慶大は先頭打者の漆畑が2球目に死球で出塁すると、2番・渕上仁(3年)が送りバントを決め、5番・小野寺和也(4年)の適時打で幸先よく先制した。
興味深いデータがある。今回の立大3連戦、慶大は8つのイニングで得点を挙げたが、そのうち7イニングで送りバントを成功させて走者を進塁させている(もう一つは1回戦9回、小野寺の適時三塁打)。特に、無死から送りバントを成功させたイニングは6回あり、全てが得点に結びついた。一方、送りバントを失敗した(他のサインに切り替えたものも含む)ケースは走者が結果的に進塁したとしても一度も得点には至っていない。
確かに送りバントを失敗しても進塁打や盗塁で形式的には同じ場面を作りことは出来る。しかし、「失敗した」という事実がチームの雰囲気に多少であれ影響してしまうということだろう。特に、大砲が不在で長打はそれほど望めない慶大打線では送りバントを確実に決め、チャンスをものにすることが重要となる。
1回戦、慶大は積極的な攻撃を仕掛けた。6本の適時打のうち、5本はファーストストライクを叩いたもの。4回表には1死から適時打を放ち2塁に進塁した漆畑が立大の捕手・前田が投球を弾いた隙に3塁を奪い、2ストライクから渕上がスクイズを決めた。7回表2死から湯本達司(3年)の適時三塁打で8-3とした直後には山本良祐(4年)がセーフティーバントを成功。
「試合中に監督からは特別な指示は出ていないが、チャンスがあったら行くというのはチームでの決まり事」(漆畑・3回戦後のコメント)
1回、9回に適時打を放った小野寺も「皆が積極的に行っていたので流れで打てた」と振り返った。「決まり事」はチーム全体に浸透し、徹底されていると言えよう。
しかし、2回戦はそれが裏目に出た感がある。狙い球を絞って鋭い打球を飛ばしていた前日とは異なり、狙いが外れたにも関わらず打ちにいっての凡打が目立ち、「特別にこれというボールはない」(山口尚記・3年)立大先発の丸山に完投勝利を許した。6回裏、先頭の漆畑が内野安打と失策で無死2塁(続く渕上がバントを空振った時に3進)とチャンスを作ったが、渕上、山口、伊藤隼太(2年)が3人とも追い込まれる前のカウント(1-1、0-1、1-2)を打ち損じて内野フライを上げてしまったのが象徴的だ。
早いカウントからの攻撃は成功すれば相手に大きなダメージを与えることができる。しかし、一つ間違えれば相手投手を楽にさせることになってしまう。打ちに行こうとする積極的な姿勢は評価されるべきだろうが、思い切りスイング出来ない球は見逃すことも必要だ。
投手陣に関しても触れておきたい。先勝して迎えた第2戦、先発のマウンドに立ったのは春季リーグ戦で第2戦の先発を全て任された4年の小室潤平ではなく、リーグ戦初登板の1年生・竹内大助だった。竹内は先頭打者を三振と好スタートを切ったが、死球を与えた後、3番・五十嵐に本塁打を打たれ洗礼を浴びる。しかし、その後は立ち直り4回3分の2を投げて4被安打、3失点。そのうち3安打、3打点と五十嵐一人にやられた以外はなかなかの投球だった。
8回表からは右腕の福谷浩司(1年)が登板。力みから明らかに外れる球も多かったが、ストレートは最速145キロ。力強い投球で2イニングを打者6人、27球で片付けた。
リーグ戦に初登板したこの二人に関して相場監督は「力をつけてきたのでこれからも機会があれば(投げさせたい)。田村(圭)、只野(尚彦)だけじゃないというところを見せてほしい」と期待を寄せる。
1年生の好投は、今回は登板機会がなかった小室、ベンチ入りすらできなかった田村や只野にとっては特に大きな刺激となるはずだ。今後、大黒柱・中林に次ぐ第2戦の先発に名乗りを挙げるのは誰なのか。激しい争いに注目だ。
結果的に立大から10季振りに勝ち点を落とすこととなった慶大だが、今後に向けて明るい材料が多く見られたのは収穫だ。相場監督が「(チームの)調子自体は悪くない」と話すように、確かに敗れた2試合いずれも紙一重の差だった。次節の相手は春の学生王者・法大。二神、加賀美の2枚看板を打ち崩すのは容易ではないが、開幕カードの東大戦では守備の乱れから延長戦に持ち込まれるなど、チームの精度は決して高いとは言えない。今カードの1戦目のように狙い球を絞り、細かいミスを減らすことができれば打ち崩すチャンスは十分にあるはずだ。
写真:湯浅寛、有賀真吾
取材:湯浅寛、安藤貴文、阪本梨紗子、高橋祐規、金澤隼人、有賀真吾、飯田拓也