「金は三欠くに溜まる」という諺がある。義理と人情と交際の三つを欠くぐらいがめつい人間でなければお金は溜まらないという意味である。日本の諺で、これほどお金の特徴を捉えた表現はないだろう
▼日本人は必死でお金を稼ぐことを嫌う。金融市場の成長により随分緩和されてきたが、日本は相変わらずお金に関して「きれいごと」を並べている
▼特に多くの学生が口を揃えて「好きなことをして給料を多く貰いたい」と言う。しかし、金を稼ぐには自分の嫌いなことをやらねばならない。汗を搔いて稼ぐとは、このことを言うのだと思う。多くの学生はお金を貰うことしか考えていないように感じる
▼そろそろ「きれいごと」から脱却すべきだ。金は歩んで来てくれない。知恵を絞って奪いに行くものだ。昨今の金融危機は私達にそれを教えてくれた。「金は天下の回り物」ではなく、片行きな物なのだ
▼今月は慶應義塾の支出超過や学生団体の不正会計など、お金に関する報道が多い。金がなければ理想を叶えることも、人を救うことも出来ない。しかし、いざそれを言葉にしてみると、いささか資本主義というものに寂しさを感じてしまうのが不思議だ。
(石川智成)