情報伝達技術の発達とともにメディアをめぐる環境は変化する。そうした環境の調査・研究をもとに、セミナーの実施や記事の発信、 放送局や企業のコンサルト等を行う次世代メディア研究所を取材した。
代表の鈴木祐司さんは、NHKでディレクターを務め、その後放送文化研究所に所属。「発信方法を考えると、 人々の情報消費行動に影響する」と語る。その後、独立し2014年に同研究所を設立し今に至る。慶大メディア・コミュ二ケーション研究所で教鞭を取っていたこともある。
まず、これまでのメディアの変化を聞いた。明治時代以降、新聞のような文字メディアが主体となった。文字を情報として消費するには知性が必須であるが、そこに音が加わり、イメージの付加を可能にした。
戦後は映像が組み合わさったテレビの普及によって、リアリティが増した。1975年には新聞を抜いて、テレビが広告市場のトップに躍り出たという。
しかし、Windows95の発売以降広まったインターネットは、これらのメディアの機能を併せ持つ。鈴木さんは、「優れたテクノロジーに古いメディアが飲み込まれていくのは仕方がない。しかし、コンテンツ作りは必ず残る」とコンテンツ制作そのものの発展がもつ可能性に注目している。
また今後のメディアの変化について「表現の流通ルートが多様化し、国民がそれを消費するためのデバイスも多様化したなら、それに応じて作品も多様化しなければならない」と鈴木さんは分析する。
アニメを例にすると、2時間の大作の原画を一度作っておけば、編集によってさまざまな時間に短縮できる。これを媒体によって形態を変えて配信すれば、何倍ものコンテンツと利益を作り出せるのだ。「こうした試行錯誤を通して、勝利の方程式を作った者が勝つ。これからのインターネット全盛の時代にこの仕組みはまだ出来ていない。これを誰が生み出すかだと思う」と鈴木さんは語った。
刻々と変化するメディア環境が情報消費行動を大きく変えた今こそ、その根底に在り続ける情報伝達の真性について、今一度再考すべきなのかもしれない。
(伊藤文一)