テレビやエアコンをはじめとする家電は、私たちの生活に不可欠な存在である。では、それらは数十年後どのような変化を遂げているのだろうか。
家電の未来について、株式会社リンクジャパンの代表・河千泰進一さんに話を聞いた。リンクジャパンでは、暮らしをよりスマートにするIoT製品の開発を行っている。
IoTは日本語で「モノのインターネット」と訳される。従来の情報伝達では人と人がインターネットを介してつながっていたが、今後は、家電や機械などのモノがインターネットにつながり、自動で動作を実行していくようになる。
最もわかりやすい例として、河千泰さんはルームエアコンを挙げた。
IoT化することによって、個人の体温や体調に合った最も快適な温度設定をスマートフォンから行うことができる。気温が上がる夜中は設定温度を下げ、気温が下がる朝方は上げる、という設定もできるのだ。また、出先からもエアコンを調節できるため、付け忘れの防止や、電気代の節約も可能になる。
また、テレビのIoT化は既に始まっている。これまでは決まったコンテンツしか受信できなかったが、現在はYouTubeのように、あらゆる人が放送局となり世界中のコンテンツを受信できる。
学生にとっても、今後IoT家電はさらに便利なツールになると河千泰さんは言う。
例えば、毎日一定の時刻になるとカーテンが自動で閉まるように設定する。そうすると、帰宅時間が遅くなった時や旅行で何日か家を空ける時も、外からは人が生活しているように見せかけられる。女性はもちろん、一人暮らしを始めて不安な学生にとっても有効な防犯システムになるはずだ。
さらに河千泰さんは、IoTの技術が社会問題を解決する鍵になると予想する。
人口の高齢化が深刻な問題となっている日本。現在、国内における一人暮らしの高齢者は600万人といわれている。
今後、老人ホームに入りたくても入れない「待機老人」の増加が危惧されている中、在宅での介護をIoT家電がサポートするようになるという。スイッチを押すと訪問介護職員に通知が行くなど、家にいながら老人ホームのような生活が送れる。このような環境が整えば、高齢者の安全を守るだけでなく、職員の負担や介護費用、社会保障費を減らすこともできる。
IoTが生活を豊かにすると期待される一方、人間の仕事を奪ってしまうのではないかと懸念する声もある。しかし、単純な作業をこなす必要がなくなる分、新たなスキルの習得が可能になり、人々は以前よりも高度で収入の高い仕事に就くことができるといえる。
将来的にIoTは社会インフラの一つになるだろうと河千泰さんは語る。
日々の暮らしから社会全体の問題まで、広く活用されることとなるIoT。私たちの生活になくてはならない存在となった未来には、より効率化されたライフスタイルが待っているだろう。
(村瀬巧・陣内望)