塾長就任に際し、塾生新聞が塾生から募った質問を織り交ぜながら、清家塾長にお話を伺った。(西原舞)

―なぜ塾長になろうと思ったのですか?(文2女ほか)
 当初は、自分からなろうと考えていたわけではなく、塾長選挙で第一次塾長候補として推薦された段階で塾長になる可能性が初めて出てきました。もちろん選出されたからにはしっかりと任務を果たしていきます。
―授業料を国立並みに安くしてもらえませんか?(政1男ほか)
 そのためには、国立と同じくらい国費を投入してもらう必要があります。また、授業料は、国から独立して教育、研究を行うためのコストという側面もあります。しかし、授業料負担が大変だという事情はわかりますので、なるべく国からの助成を得ていきたいと考えています。
―塾長の考える「実学」とは何ですか?(文4男)
 自分の頭で考えるということだと思います。考えるとは、自ら問題を発見し、仮説を立て、それを検証し、表現すること。社会が大きな変化を遂げようとしている現代、既存の概念にとらわれず、そのようなプロセスを踏むことはたいへん重要です。
―「塾生には何事においても仮説を立て、実証する能力を身につけてほしい」とおっしゃっていますが、それを身につけるためにはどうすればいいのでしょうか?(商3男)
 問題を見つけ、仮説を立てるためには、まず、「なぜ」という疑問をもつこと。そして、論理的思考力を養うこと。文系の学生であっても数学などを勉強することは有効でしょう。実証するためには、統計学など専門分野ごとの検証の作法を学んでもらいたいと思います。
―悔いのない学生生活を送るために大切なことは?(経4男)
 悔いが残らないのは、将来の予測が完全にできる場合のみ。しかし、人間の予測は外れるものです。そういった場合にも、すべて自分の選択であるということを自覚し、悔いを悔いと考えず、反省し予測しなおすことが大切でしょう。
―福澤先生は好きですか?(文1女)
 福澤先生の考え方は好きですし、素晴らしい。それは、福澤先生が塾外からも高い評価を得ていることからわかります。また、実際にお会いしたことはありませんが、福澤先生の自伝などを読むと、人としても好きなタイプだなと感じます。
―どうすれば彼女ができますか?(理2男)
 友達をつくる場合であれば、お互いを理解しようとする気持ちが大切でしょう。彼女にあてはまるかどうかはわかりませんが。

(以下、塾生新聞からの質問)

―塾長ご自身はどのような塾生時代をお過ごしになりましたか?
 日吉時代は、高校時代所属していたラグビー部を手伝うなどしていました。入学当初は、自分が大学で何をしたいかわからず、悩み多き学生でした。しかし、ゼミで労働経済学に出会い、労働という人間くさい現象を経済理論と統計資料で説明するという組み合わせの面白さに魅かれました。今振り返ると、悩んだからこそ、最終的に将来の展望が開けたのだと思います。
―お忙しいと思いますが、息抜きには何をなさっていますか?
 犬の散歩をしています。最近、犬が年をとってきて散歩に行ってもすぐ帰りたがるようになったので、あまり運動にはなりませんね。
―昨年度、義塾が大幅な赤字を出しましたが、それについてはどう思われますか?
 現在、義塾の財政状態が少々窮屈になっているのは確かです。これからも、財政が安定的に推移するよう、場合によっては事業計画の見直しをする必要もあると考えています。
―一部週刊誌では、塾長選をめぐって様々な混乱があったと報じられましたが、それについてはどのようにお考えですか?
 候補者自身は、台風の目の中にいるようなもので十分把握していない部分もありますが、いわゆる選挙運動のようなものが行われているという印象はありません。また、選挙運動をしても効果がないように思います。「誰々に票を入れろ」というような働きかけを嫌がる人が多いのが大学ですので。
―最後に、今後、どのような方針で義塾を運営しようとお考えですか?
 教育、研究、医療の質をさらに高めていきたい。そのためには、教職員ひとりひとりが何をすべきか考え、責務を果たすことが求められます。私は彼らの努力を支えていきたいと考えています。また、予算の配分など、全体として決めなければならないこともあります。その場合、情報を共有した上で、幅広い議論を尽くし、合意を形成していきたいと考えています。
―ありがとうございました。