多くの金融資産はリスクを伴う。そのリスクは確率的なもので、様々な可能性をどの程度の確率で予測するかが問題だ。今回のような急激な金融危機の予測は難しかっただろう。
義塾が結果的に損失を出したのは事実。しかし、有価証券の投資に関して事前の判断が明らかに誤っていたとは言えない。将来何が起こるかわからない中での事前の判断と事後の結果とは分けて考える必要がある。
また、大学を評価する際、つい企業と比較しがちだが、大学と企業は目的も評価の時間軸も違う。大学の目的はより良い教育、研究の実践であり、その成果は数十年たってみないとわからない。短期間での収益が重視される企業とは異なる。財務状態だけで大学を評価するのは一面的だ。
今後は、適正な負担で良質の教育や研究を提供するという観点から、資産運用だけでなく、全体的な経営の見直しが必要。同じ効果が見込まれるのであればできるだけ費用が少ない方を選び、無駄を省くべきだ。ただし、事業に関しては、様々な可能性を考慮した上で、何をやるか決定することが求められるのであり、真に必要なものまで中止や延期をするべきではないだろう。 聞き手=西原舞