著作権法の改正案に関して、さまざまなところで混乱の声があがっている。特に「スクリーンショットも違法になる」という内容については人々の反応も大きい。
そんな中、安倍晋三首相が、違法ダウンロードの対象を全著作物へ拡大することについて、削除要請を出したことも話題になった。改正案の通常国会への提出は見送りとなったが、まだまだ注目を集める著作権法の改正について、慶大法学部の大屋雄裕教授に話を聞いた。
改正までの流れ
この改正案はもともと「漫画村」をはじめとする海賊版サイトの取り締まりのために出されたものである。2009年に違法化された音楽と動画のダウンロードだけでなく、違法とする対象をすべての著作物にするという内容がまとめられている。
違法となる条件
インターネット上で不正に複製され、不特定多数に公開されている著作物。これらが違法と知りながら、デジタル方式で複製をすることが違法行為となる条件である。
つまり、閲覧すること自体は複製行為にはあたらないため、違法行為は成立しない。また「デジタル方式での複製」という限定があるため、プリントアウトなどのデジタル方式以外での複製も違法行為にはならない。
スクショも違法?
特に世間の注目を集めていたのが「スクリーンショット」だ。部分的に保存したいものを気軽に撮ることができるが、スクリーンショットもデジタル方式の複製にあたるので、違法行為となってしまう。
改正による問題点とは
しかし、ここで問題が発生する。これまでの音楽や動画は基本的にダウンロードして楽しむものであったため、ダウンロード違法化はつじつまがあっているといえた。一方、漫画はダウンロードせずに読むことができ、閲覧は違法とはならない。海賊版サイト対策のための改正案にもかかわらず、問題のサイトを取り締まれない事態となっているのだ。
著作権制度は、端的にいうと著作者の生活を支えるためにある。適切なインセンティブとしてのお金が与えられることが、健全な文化の発展のために必要であり、違法なアップロード、ダウンロードはそのシステムをむしばむものである。
改正から考える「文化」
大屋教授は「文化にはお金が必要であり、文化を楽しむ側は、ちゃんとそれを払わなければいけない。適切な人に適切なお金を払うことが、文化を支えていくのだという気持ちを持つことが大切だ」と語った。
一人一人が文化を担っているという意識を持って、この著作権法改正の今後の動向を見守っていくべきだろう。
(西岡優希)