弓術部の本郷一輝選手(法3)は、昨年8月に開催された全日本学生弓道選手権大会の男子個人で優勝を果たし、日本一に輝いた。
長く海外で生活した帰国子女で、日本の武道へ強い憧れを抱いていた。湘南藤沢中等部在学時から弓術部に所属。弓道人気が高まっていたこともこの競技を選んだ理由の一つだった。大学進学時は、迷うことなく弓術部への入部を決めた。
弓道の魅力について「大勢の人が静かに見守る中心で弓を引くという、ほかの競技ではなかなか味わうことのできない緊張感や快感」と話す。また、周りの強さに左右されず、どれだけストイックに努力し、自分と向き合うかによって結果が変わってくるのも面白いという。弓道は自分との戦いだ。
自身の最大の武器は、粘り強さだ。「あたる」と思うまで手を離さず的を狙い続けることができる。的を狙っている時間は、他の選手と比べて圧倒的に長い。
弓道は、「意味のない練習」を簡単にできてしまう競技。だからこそ意味のある充実した練習を心がけ、常に「準備」することも活躍を支えている大きな要因の一つだ。
全国の舞台には計り知れないほどの緊張感がある。全日本大会常連の本郷選手でも、足が震えたり心臓がバクバク暴れたりするという。
緊張する場面でも結果を出すことができるのは、目標としている弓術部OBの礒野晋作さんの存在が関係している。礒野さんは2009年の全日本学生弓道王座決定戦で、慶大を23年ぶりの優勝に導いた選手。「活躍したい」「大会に出たい」という思いよりも、根底にある「礒野さんを超えたい」という目標に支えられている。全日本大会での優勝も「この夢への一歩に過ぎない」と言う。目指すべき偉大な存在が自身をさらに強くする。
本郷さんは今後の部としての目標に、関東Ⅰ部リーグへの復帰と全日本での団体優勝を掲げる。個人としては全日本連覇と東西対抗戦出場をねらう。弓術部と本郷選手の活躍に注目だ。
(大津こころ)