革新的なものを生み出すことは、容易ではない。しかし、素晴らしいイノベーションは、幾度となく私たちに希望を抱かせてくれた。須知高匡さん(理3)もまた、世の中に新たな風をもたらそうとしている。
須知さんはZip Infrastructure株式会社を立ち上げ、代表取締役CEOとして、新たな輸送手段を提供しようと挑戦している。注目したのは、最新技術である宇宙エレベーター技術と、ジップライン。宇宙エレベーターの開発研究の中でも、須知さんらは昇降機の技術を活用する。それを、ジップラインと呼ばれる、ワイヤーに取り付けた滑車を用いて人や貨物を運ぶ移動手段と組み合わせ、ロープウェイのようなインフラを開発している。
この開発が実現すれば、単なる交通手段だけでなく、農林水産業やインフラ施設点検、災害支援などの人や物が移動するさまざまな現場でも利用できる。
大学1年生より二つのロボットサークルに所属している須知さん。ロボットコンテストに出場した際、「ロボット制作が大学レベルの大会で終わって良いのか。社会に実用化させることはできないだろうか」とよく考えていた。新しい交通インフラを作ろうと考えたのは、宇宙エレベーターの研究をするサークルへの所属がきっかけだった。高校時代から起業に興味があったこともあり、今年の7月に会社を立ち上げた。
現在、新たな交通インフラの実現に向け、SFC内での実験線完成へのプロジェクトを進行中だ。学生のエンジニアに投資する人は少ないため、開発と並行して様々な企業へのプレゼンテーションも行っている。実験線が成功すれば、行政上の問題をクリアし、湘南台駅とSFC、日吉と矢上とを結ぶロープウェイを実現させたいという。
彼には人生における目標もある。宇宙エレベーターの実現だ。「会社で技術と資金を蓄え、宇宙エレベーターの実現のために投資する」と真剣なまなざしで語る。
革新を生み出すには、未来を見通して、物事を考える力が求められる。「新聞、インターネット、SNS、Twitterなどにより情報を収集し、知識の引き出しを多くする。知識の組み合わせの多さが、生活の不便さに気づき、新たなものを生み出すきっかけにつながる」。須知さんはささいなことにでも興味を持ち、行動に移す姿勢で臨む。同時に、発想を他人に理解してもらうことは難しい。実現可能なものだと思ってもらえるように働きかけることが、CEOとしての役割だと考えている。現在、プロジェクト実現のためのインターンも募集している。
会社の存在を大切にしながらも、「会社は夢を実現させる道具」という須知さん。今日もZip InfrastructureのTシャツを着て、走り続けている。
(桐原龍哉)
須知さんが代表取締役CEOを務める、Zip Infrastructureのサイトは、こちら。