温暖な気候により各地で夏日となった今月4日、三田キャンパス内で鮮やかなイチョウの落葉(らくよう)が見られた。初めて知ったが、このイチョウの木は「大銀杏」と呼ばれ、どうやら三田キャンパスのシンボルとなっているようである。「大銀杏」といえば、いつかに倒れた鶴岡八幡宮のものが有名だが、よく見れば南校舎の階段を昇って姿を見せる、あの樹木もなかなかのものだ。
思うに、イチョウは花よりも葉のほうが我々にとってなじみ深い。そうであるからこそ桜と違って、我々は散っていく木の葉の舞を愛でるのであろう。葉が扇形であることは、わたしに一種の芸能性を感じさせる。
落ちたイチョウは黄金の絨毯をキャンパス中庭に広げていた。もうすぐ本格的な冬の季節。その輝きは長くは続かない。わたしも来たるべき暗闇に備えなければ――。