言葉は思考をつくる。うれしい、と一概に言ってもどれくらい、どのようにうれしいのかは、状況や人によって異なる。それを「うれしい」という、たった4字で表わすのが言葉である。人は、言葉によって他人の気持ちを想像することしかできない。言葉で伝えられることは限定的なのである。
他方で、言葉を必要としないダンスもまた、伝達手段のひとつである。舞台で見せるダンサーの真剣さや努力する姿、身体的パワーに圧倒される。会話をしたわけではないが、観客は時に笑顔になり、時に涙する。観客がダンサーに共鳴する瞬間である。
SNSが流行するネット社会は言葉で溢れ、人は言葉に翻弄されている。部活、テレビ、MV、ミュージカルなどにおけるダンスブームが注目される現在。ダンスという、原始的で言葉を超越した表現方法に、人々は、魅力を感じているのではないか。ダンスは時に、言葉以上に人の心を動かすことができるのである。
(松尾美那実)