盛り上がりを見せるステージの横に建つ大学院校舎5階の351A教室にて国際政経研究会の展示活動が行われている。国際政経研究会は主に人文・社会科学関係の文献を輪読する「勉強会」と論文集『Spur』の発行を行っており、この部屋でステージのパフォーマンスを俯瞰しながら学術的成果を直にみることができる。

同研究会の論文集『Spur』は一時期中絶していたが、平成26(2014)年の三田祭より刊行は再開された。今年は長年続けて来た形式をコンテンポラリーなものに刷新するとともに、内容を前年に比べ充実させたという。

今年の主題は「第一次世界大戦終結百周年」とし、各論(関連した論文)4本と主題外の独立論文1本、論文執筆者のコラムにより構成されている。

各論1は、用兵思想の観点からドイツの敗因を分析するものである。一般にドイツの敗因は政治的・経済的理由に求められ、軍事的理由は軽視されがちだが、軍事的にもドイツは問題があったのではないのかという問題意識から出発したものである。

各論2は、規範倫理の観点から大戦がどのように正当化できるのか思索したものである。

各論3は、政治の「軍事化」の観点から大戦直後に起きたアイルランドの独立・南北分断の原因を分析したものである。

各論4は、ドゥルーズの定義した不可能性・道化の概念を安吾やセリーヌの著作を通じてより深く理解しようと試みたものである。

独立論文は、インパール作戦の起源を「大東亜共栄圏」構想から考えたものである。

展示は論文の要約や参考文献、勉強会にて使用した文献などがある。また、過去の『Spur』のバックナンバーも置かれている。古くは昭和50年代の『Spur』もあり、同研究会の長い歴史と当時の情勢に思いを馳せることができる。

『Spur』の販売と各種展示は三田祭期間中は継続して行われる。売り切れる前に一度訪れてはいかがだろうか?

(中川翼)