慶明戦での90㍍独走トライ、12月のアジアカップ決勝ロスタイムでの逆転トライ。そのプレーは見る者の目を釘付けにする。大学生活最後の年はどのようなプレーを見せてくれるのか。「エース達の誓い」最終回は蹴球部・山田章仁(総4)を取り上げる。
「見に来て下さったお客様が喜んで帰っていただけるようなプレーをして試合を盛り上げたいですね」。試合後、何度か山田の口から聞かれた言葉だ。昨年は「ウイングとしてのオプションを増やす」という個人としての目標は達成できた。試合を盛り上げる要素は増えた。しかし、チームは早稲田に2度敗れ、大学選手権では「正月越え」を果たすことも出来なかった。「やり残したことがあるという感じ。チームに貢献できなかった」。が、山田の活躍がなければ落としていたという試合は数知れない。いくら自分が良いプレーをしたとしても、チームが負ける悔しさは大きい、ということだ。
今オフは川口(ジュビロ磐田)、久保(横浜FC)ら一流サッカー選手と沖縄で自主トレを行った。競技が違う中、走り込みなど、下半身強化に重点を置いたトレーニングだったが、「皆さん、意識が高かったですね。特に体調管理など、見習わなければいけないなと思いました」と振り返った。そうは言いつつも山田本人のコンディションに対する意識は高い。シーズンに理想の体重で入れるように食事の摂り方、メニューにまで細かく気を配っている。
冒頭にもあるように、山田は派手なプレーが多い。しかし、理想のプレーは「どんな形でもいいからトライを取り切るプレー」だという。日本代表WTB・大畑大介(神戸製鋼)の後継者としての期待も大きいが、山田にとって目標とする選手はいない。自分が目標とされる選手になりたいという思いがあるからだ。「将来は日本代表になってW杯にも出たいし、海外にも挑戦したいと思っていますが、今はそれより慶應義塾大学のみんなで一緒に日本一になりたいという気持ちが大きいです。それに貢献できるようなプレーがしたいと思っています。オプションも年を重ねるごとに増やしていきたいです」。
蹴球部は4月から林新監督を迎える。新監督に期待することは「今までなかったチーム全体のコーチングとか、全てですね。全て期待しています」。現在、チームは基礎練習を重ねている。選手同士のコミュニケーションがとれ、状態はいいという。世界を目指す大学ラグビー界のエースは最上級生となった今年、更なる成長を遂げ、チームを日本一へと導く。
(湯浅寛)